こんにちは。暑い日が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 今回は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下「DV防止法」といいます。)に基づく保護命令についてお話しさせていただこうと思います。なお、保護命令の仕組みや手続等については、本ブログで石黒弁護士による記事がございますので、そちらをご参照ください。

DV防止法と保護命令(1)
DV防止法と保護命令(2)
DV防止法と保護命令(3)

1 件数等

 DV防止法が制定された平成13年には約170件ほどであったものが、平成14年には約1400件、平成16年以降は2000件を超え、近年は約2700件ほどで推移しています。

 終局事由としては、一部認容も含め認容が7割前後、取下げが2割前後、却下が1割前後となっています。

2 保護命令事件の平均審理期間

 認容された保護命令事件の平均審理期間としては、だいたい13日前後です。このように、短期間で保護命令が出るのは、配偶者からの暴力から被害者を守るためには、緊急を要するとされているからです。

 しかし、他方で、証明責任としては疎明(立証する事実について裁判官に確からしいとの心証を抱かせること)では足りず、証明(裁判官に確信を抱かせること)まで必要とされ、相手方にも重大な影響が出ることから、証拠について十分に精査し判断することが要求されます。したがって、裁判官には、被害者保護の要請と慎重な判断をしなければならないこととの間でジレンマがあるようです。

3 手続の流れ

 まずは、申立人の面接から始まります。最初の面接期日に、裁判官が申立人から申立書の内容について面接をし、立証が十分かを確認しながら申立人の主張や事実関係について確認していきます。

 次に、相手方の審尋期日が約1週間後に入れられ、今度は相手方の言い分を聞くことになります。相手方はこの短い期間の間に答弁書及び証拠を提出することになるので、大変です。提出する証拠としては、近親者や周囲の友人等の陳述書等があげられます。この審尋期日で、証拠から相手方が暴力をしていることが認められる場合は、即日保護命令の言い渡しがなされることもあります。

 しかし、相手方の言い分に合理性があると判断されれば、もう一度申立人から話を聞くための審尋期日が入れられます。この審尋期日がいつかということについては、万が一のことも考慮して、相手方や相手方の代理人には伝えられません。

 保護命令の効力は、言い渡しの場合は言い渡しによりすぐに生じ、送達の場合は送達された時に生じます。

4 まとめ

 このように、保護命令事件の場合、それぞれ相手方の主張・立証の機会に立ち会えないまま、裁判官が心証を形成し、保護命令を認容するか却下するかの判断をすることになります。しかも、上述したように、非常に短期間でその判断がなされるということで、手続保障の点でいささか問題のある制度のような気がします。