Q.
結婚10年目で子供2人を引き取り離婚しました。
これからシングルマザーとして生活していきますが、お金の面がとても不安です。生活保護を受ける条件や養育費、また扶助されるものがあれば知りたいです。

1.生活保護とはどのような制度?

 生活保護は、国民が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条)を実現するため、必要な保護を行うものです(生活保護法1条)。
 このような趣旨から、生活に困窮する人は、その困窮の程度に応じて必要な保護を受けられるようになります。

2.生活保護を受けるための条件とは?

 生活保護は、上記のとおり、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を実現するための制度です。つまり、十分な資産を有する場合は、その資産を活用することで健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるため、生活保護を受けることができません。

 したがって、利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用してもなお健康で文化的な最低限度の生活を下回る場合に生活保護を受けることができます(生活保護法4条1項)。

 そのため、仕事ができる場合は、まずは仕事をする必要があります。また、価値がある物や使用していない不動産がある場合は、それらを売却することが必要となるといえるでしょう。

 相談者さんの場合、お子さん2人を育てているとのことですので、仕事ができるかどうかはお子さんの年齢にもよると思います。一定の年齢に達している場合は、働くことが可能ですから、まず仕事をする必要があります。また、売却できるものがあれば、それらを売却する必要があります。それでもなお最低限の基準を下回っていれば、生活保護を受けられる可能性があります。

3.生活保護の場合、養育費はもらえるの?

 生活保護を受けている場合であっても養育費をもらうことができます。養育費等の元夫からの扶養については、生活保護よりも優先して行われます(生活保護法4条2項)。すなわち、生活保護の申請をする際は、まず元夫の扶養を受け、それでも最低限の基準を下回る場合に生活保護を受けられるということです。

 したがって、仮に生活保護を受けていたとしても、それを理由として養育費が減額されるということはありません。

 なお、養育費については、原則として、権利者及び義務者の収入、子供の人数、年齢によって基準が決まっています。この点については、養育費・婚姻費用算定表を参照してください。

4.生活保護を受ける際、扶助されるものはある?

 生活保護の扶助は、以下のものがあります。

  1. 生活扶助(食費、光熱費等の日常生活に必要な費用に充てられる扶助)
  2. 教育扶助(義務教育を受けるための教材費等に充てられる扶助)
  3. 住宅扶助(住宅の家賃等に充てられる扶助)
  4. 医療扶助(医療サービスを受けられる扶助)
  5. 介護扶助(介護サービスを受けられる扶助)
  6. 出産扶助(出産費用に充てられる扶助)
  7. 生業扶助(就労に必要な技能の習得等に充てられる扶助)
  8. 埋葬扶助(埋葬費用に充てられる扶助)

 相談者さんは、シングルマザーとしてお子さん2人を育てているとのことですから、上記の生活扶助、教育扶助、住宅扶助等を受けられる可能性があります。

 上記のほか、病気になった場合などは、医療扶助として医療を受けられる可能性があります。また、これから仕事をするのにあたり、生業扶助として、職業訓練所での訓練等を受けられる可能性もあります。

5.生活福祉金制度とは?

 生活保護を受けるほどの状態ではなく、生活保護を受けられないとしても、一定の場合に資金の貸付を受けることのできる生活福祉度があります。
 社会福祉資金貸付制度は、所得の少ない世帯等に対し、無利子または低利子で資金の貸付を行うものです。生活保護の支援とは違い貸付です。そのため、生活保護とは違い、この制度を利用する場合は、その返済を行う必要があります。

6.手当と生活保護について

 生活保護は、経済的な困窮を理由として支給されるのに対し、行政から受ける手当は、家庭環境が一定の条件を満たす場合に支給されるものです。

 手当としては、①児童手当、②児童扶養手当、③特別児童扶養手当などがあります。

 これらの手当は、養育している子供の年齢や母子(父子)家庭であるか否か、収入額などにより支給の可否や金額が決まります。

 生活保護と行政からの諸手当は、行政からの諸手当が優先されます(生活保護法4条2項)。そのため、相談者さんが収入、元夫からの養育費、行政からの諸手当を得ていたとしても、直ちに生活保護を受けられなくなるわけではありません。ただし、養育費、諸手当を合算し、生活保護の水準を上回る世帯収入となる場合には、生活保護を受けることができなくなります。