1 前回までの概要
前回までは、一方の配偶者が外国人である場合等のいわゆる国際離婚をする際の問題点のうち、どこの国の裁判所で審理されるかという国際裁判管轄の問題点、また、日本の裁判所で審理されるとしても、裁判の開始までに長い時間がかかり得るという送達の問題について解説致しました。
(前回の記事はこちら:国際離婚の手続(2)~送達の問題~)
今回は、前回と同じ事例を基に、日本の裁判所で審理されることが決まり、訴状の送達も完了したとして、では、一体どこの国の法律が適用されるのか、という準拠法の問題について解説します。
2 事例
日本人の夫Aとロシア人の妻Bが、その間に生まれた長男C(1歳)とともに日本で生活をしていたものの、夫婦ケンカを契機にロシア人妻Bが母国ロシアへ長男Cを連れて帰国してしまった。日本人の夫Aは、長男Cと会いたいが、これに対し、ロシア人妻Bは、Aとの離婚を希望するとともに、CをAに会わせるつもりはないと主張している。日本人の夫Aは、離婚はやむを得ないと考えているが、Cには定期的に会いたいと考え、日本の裁判所に対して、訴訟を提起した。
3 国際離婚における準拠法の問題
(1)準拠法というのは、要するに、問題を解決するにあたってどこの国の法律を適用するのかということなのですが、離婚と一口に言っても、親権・財産分与・養育費・慰謝料等の様々な問題を解決しなければなりません。そして、準拠法として、どこの国の法律を適用するかは、個々の法律問題の性質を踏まえ、その法律問題毎に決められていきます。離婚する際の様々な問題点全体について、「ロシア法!いや、日本法!」というように一律に決められるわけではないのです(結果的に、すべて一方の国の法律が適用されることはあります)。
(2)この法律問題毎に準拠法を決定する基準となるのが、日本においては、法の適用に関する通則法という法律です(世界共通のルールはありません)。
たとえば、離婚自体の効力という夫婦関係について、上記の事例においては、日本法が準拠法とされます(法の適用に関する通則法27条但書、25条)。
他方、親権や養育費等の親子関係については、上記の事例においては、ロシア法が適用されることとなります(同法32条)。なお、ロシア法では、日本よりも養育費の相場が高く設定されていますので、親権者でない方の親は、日本法が適用されるよりも重い負担を負うことになるので注意が必要です。
4 まとめ
このように、国際離婚の案件では、日本の裁判所で審理されるとしても、問題点によって適用される法律が異なり得るという特徴があります。どの事柄についてどこの国の法律が適用されるのか、また、外国の法律が適用されると、日本法が適用される場合とどう違ってくるのか等、非常に複雑困難な問題が生じます。是非弁護士へお気軽にご相談下さい。
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