1 前回の概要

 前回は、一方の配偶者が外国人である場合等のいわゆる国際離婚をする際の問題点のうち、どこの国の裁判所で審理されるかという国際裁判管轄の問題点について解説致しました。
 (前回の記事はこちら:国際離婚(1)~国際裁判管轄~

 今回は、以下の事例を参考に、日本の裁判所で審理されるとして、その裁判所に訴状を提出した後に生じる「送達」の問題についてご説明したいと思います。

2 事例

 日本人の夫Aとロシア人の妻Bが、その間に生まれた長男C(1歳)とともに日本で生活をしていたものの、夫婦ケンカを契機にロシア妻Bが母国ロシアへ長男Cを連れて帰国してしまった。日本人の夫Aは、長男Cと会いたいが、これに対し、ロシア人妻Bは、Aとの離婚を希望するとともに、CをAに会わせるつもりはないと主張している。日本人の夫Aは、離婚はやむを得ないと考えているが、Cには定期的に会いたいと考え、日本の裁判所に対して、訴訟を提起した。

3 国際離婚における送達の問題

 通常の訴訟の場合、原告が裁判所へ正副2通の訴状(原告の主張を記載した紙)を提出し、裁判所が訴状の副本を被告へ送達して原告の主張を伝えることで、裁判が始まります。国内の案件であれば、裁判所が訴状を受け取ってから、その審査を経ても、大抵は1~2週間で被告の下へ訴状が郵送されます。

 しかしながら、被告が国外にいるという場合、原告から裁判所が受け取った訴状が被告の下へ届くのに実に半年以上かかってしまうことがざらにあります。すなわち、訴え提起してから、裁判が始まるまでに早くても半年かかることがあり得るということです。

 なぜこういう事態が起きるかというと、単純に裁判所は外国にいる被告に対して海外便で訴状を郵送するわけではないからです。外国にいる被告に対して、訴状を送達する多くの場合、

 日本の裁判所(家庭裁判所)→ 日本の最高裁判所 → 日本の外務省 → 在外日本国領事館 → 被告宅

 というように非常に多くの国家機関を経由し、ようやく被告の下に送達されることになります(この流れの送達方法を領事送達といいます。)。

 なぜこういうことになるかというと、裁判期日への呼出という国の行為は、その国の主権の発動行為なので、日本国の主権の及ばない外国にいる外国人に対して、その外国に何の断りもなく、日本国の主権を発動すると、それは当該国の主権を侵害する行為になりかねないため、それを避けるため、両国の外交筋を通すことになっているからなのです(なお、どこの国でも領事送達ができるわけではなく、領事送達以外の外国送達の方法だと、さらに多くの期間を経由するため、さらに時間がかかり得ます)。

 したがって、日本と親交が深くなかったり、外交関係が悪化している国にいる被告を訴える場合には、送達には半年どころか1年以上かかることだって十分に予想されます。

4 まとめ

 このように、国際離婚の案件では、訴訟が日本の裁判所でやれるとしても、訴状の送達に非常に時間がかかってしまう可能性が高いことを覚悟しなければなりません。

 弊所では、こうした国際離婚特有の問題点を踏まえつつ、問題解決に向けて、訴訟だけでなく交渉の代理や書面作成等、事案に応じて最も適切な解決方法をご提案致します。弊所弁護士へお気軽にご相談下さい。
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弁護士 森 惇一