1.送達とは

 送達とは、法定の方式に従って行われる、訴訟上の書類の内容の伝達方法のことを言い、訴状が送達されることにより、訴訟係属(裁判所で訴訟として取り扱い中となること)となります。

 送達は、以下に述べるとおり、外国に居住する相手と離婚裁判するにあたって、まず、越えなければならない障壁です。

2.相手が外国に住んでいる場合

 相手が外国に住んでいる場合、その相手の居住国と日本との、送達に関する条約や取り決めの有無によって、利用できる方法が異なります。

 たとえば、日本は、民訴条約と送達条約という二つの多国間条約を締結し、領事送達等の方法を取り決めています。また、アメリカ、イギリス、ブラジルやタイとも二国間の取り決めをし、送達の方法を取り決めています。

3.具体的選択

 相手の居住国によりますが、一般的にとても時間のかかる外国送達の中でも、比較的簡素と言われるのが領事送達又は中央当局送達です。

 領事送達は、申し立てられた裁判所から、最高裁判所を経由し、日本の在外領事館が、直接当事者に送達します。これは、うまくいけば、一番手間と時間がかからない方法です(アメリカでは3か月程度、実際には2カ月程度で完了することもあります。)。ただし、日本の領事が外国で強制的に送達を行うことはできませんので、受領を拒否された場合には、送達をやり直すことになり、二度手間となりかなりの時間を無駄にしてしまします。

 中央当局送達は、申し立てられた裁判所から、最高裁判所を経由し、各国が指定する中央当局(通常外務省又は総務省)が当事者に送達します。これは、相手居住国の送達機関を通すので、相手の受領拒否が想定されても、強制的に送達することが可能となります。もっとも、領事送達に比べればかなりの時間を要します(アメリカでは12カ月程度と言われています。)。

 こうしてみると、相手が裁判に応じてくれそうだという場合は領事送達、相手が訴訟を嫌がっている場合は中央当局送達が妥当といえます。
 とはいっても、いずれにしても外国送達は時間がかかるので、訴訟提起する前に、協議離婚することはできないか、訴訟外で私的に内容を知らせるなど工夫をする必要あると考えます。
 外国に居住する相手との離婚を考えている方は、ぜひ専門家にご相談ください。

弁護士 江森 瑠美