1 はじめに

 我々は離婚のご相談を多く受けていますが、その中には、日本に住んでいる日本人同士の夫婦だけではなく、一方配偶者が外国人の方だったり、または、外国に住まわれている方の離婚の相談もあります。

 このような国際離婚については、日本に住んでいる日本人同士の夫婦の離婚よりも遥かに複雑な問題が生じますので、複数回にわたって、国際離婚においてどのような問題が生じるか、比較的多い事例を使って解説してみたいと思います。

2【事例】

 日本人の夫Aとイギリス人の妻Bが、その間に生まれた長男C(1歳)とともに日本で生活をしていたものの、夫婦ケンカを契機にイギリス妻Bが母国イギリスへ長男Cを連れて帰国してしまった。

 日本人の夫Aは、長男Cと会いたいが、これに対し、イギリス人妻Bは、Aとの離婚を希望するとともに、CをAに会わせるつもりはないと主張している。日本人の夫Aは、離婚はやむを得ないと考えているが、Cには定期的に会いたいと思っている。Aはどのように対処すればよいか。

3 国際裁判管轄(どの国の裁判所か)の問題

 【事例】におけるAB間では、主に離婚後に非親権者が子に会う面会交流の有無を巡って当事者間で話合いがつかず、離婚もできないままになっています。通常の国内離婚であれば、当事者間で話し合いがつかない場合、日本の裁判所に対して、調停の申し立てや訴訟を提起することで、離婚や面会交流の獲得を実現することができますが、【事例】のような国際離婚の場合、そもそもAB間の離婚の問題を日本の裁判所で扱ってくれるのかという、国際裁判管轄の問題が生じます。

 【事例】のAは、日本に住んでおり、Bのいるイギリスの裁判所で調停や訴訟を行うことは非常に困難ですので、日本の裁判所で調停や訴訟を行えるかどうかは死活問題です。この点、通常の民事訴訟は、平成23年の民事訴訟法改正により国際裁判管轄を定める明文の規定があるのですが、離婚等の家事事件については、いまだ明文の規定はなく、2つの最高裁判例(昭和39年3月25日、平成8年6月24日)が示した大まかな基準により、条理に従って個別に日本の裁判所で取り扱えるか判断するというのが実務です。

4【事例】の国際裁判管轄

(1)上記の2つの最高裁判例は、その関係性について解釈が分かれてはいるのですが、 昭和39年3月25日判例は、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるには、「被告の住所が日本にあることを原則とする」としながらも、「原告が遺棄された場合・・・原告の住所が日本にあれば、例外的に日本に国際裁判管轄が認められる。」と述べており、「原告が遺棄された場合」とは、原告と被告が婚姻後日本で婚姻生活を送っていたものの、被告が原告を日本に残したまま自国に帰ってしまったり、外国へ移住してしまった場合がこれにあてはまります。

 【事例】においては、AとBは日本で生活していた後、BがAを日本に残したま母国イギリスへ帰国しているので、昭和39年3月25日判例によれば、【事例】の場合は、日本に国際裁判管轄が認められることになります。

(2)他方、平成8年6月24日判例は、「被告が我が国に住所を有しない場合であっても・・・離婚請求と我が国との関連性が認められ」る場合には、日本に国際裁判管轄が認められる余地があるとし、その際「原告が被告の住所地国に離婚請求訴訟を提起することにつき法律上又は事実上の障害があるかどうか及びその程度をも考慮」するとしています。

 この判例の考え方によっても、【事例】においては、日本に住む日本人のAが、イギリスの裁判所に離婚訴訟を行うことは莫大な費用がかかり、少なくとも「事実上の障害がある」といえ、「その程度」も甚大といえるでしょうから、やはり日本に国際裁判管轄が認められる可能性が高いでしょう。

5 まとめ

 以上のように、国際離婚の場合は、そもそも日本の裁判所で調停・訴訟が提起できるかという問題が生じます。また、離婚の国際裁判管轄を明確に定めているルールはなく、その判断は難しいので、国際離婚を扱う弁護士へお気軽にご相談下さい。

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弁護士 森 惇一