9月も終わりに近づき、朝晩は涼しくなってきました。夏があっという間にすぎてしまって、夏が好きな私としては寂しく感じてしまいます。
今回は、家事債務を確保するため、強制執行によって回収する場合についてというテーマです。特に、養育費は、離婚後通常は子どもが成人するまでの長い間支払われるもので、途中で支払われなくなることが多いものですから、養育費の場合についてお話させていただきます。
公正証書を作成したり、調停調書、審判、判決といった強制執行力のある文書によって養育費の支払いを決めた場合、相手が養育費を支払わなくなったときに、相手の財産に対して強制執行をかけることができます。
この場合、相手の差し押さえる財産としては、給与債権が多いです。給与債権を差し押さえる場合は、通常は税金や社会保険料を差し引いた後の4分の1までしか差し押さえることができないのですが(ただし、税金などを控除した額が44万円以上の場合には、33万円を超える額の全部を差し押さえることができます。)、養育費のような扶養義務にかかる債権をもってする差押えの場合には、給与から税金や社会保険料等を控除した後の2分の1までを差し押さえることができます(民事執行法152条3項)。
また、養育費などの扶養義務に関して定期的に支払われる債権については、一度義務者が滞納すれば、将来の債権についても強制執行で取立てが可能となります(民事執行法151条の2)。
たとえば、養育費を毎月末日限り月額3万円を成人するまで支払う義務を、平成23年9月に一回怠ると、平成23年9月分だけではなく、その子どもが成人に達する日の属する月までの分を強制執行することができるのです。
ただ、これは将来の養育費を一括して現時点で取立てができるということではなく、平成23年9月30日に支払われる分についてはその日を過ぎなければ取立てはできませんし、その後の毎月分についても、同じく債権が発生する毎月末日を過ぎないと取立てができません。つまり、何度も強制執行の申立てをしなくとも、一度申立てをすれば、その後は毎月強制的に養育費の取立てができるという特例なのです。
このように、一度の申立てで取立てができるのは、離婚前の婚姻費用、離婚後の養育費など、民事執行法151条の2第1項にあげられたものだけとなっています。ですから、慰謝料や財産分与は、長期の分割払いの定めをしていても、これには該当しません。
したがって、公正証書を作成する場合には、養育費や婚姻費用など、債権を明確にしておくべきであり、解決金や和解金といった名目にしてしまうと、この特例が使えないこともありえますので注意が必要です。