残暑お見舞い申し上げます。今年は、例年より早く梅雨明け宣言が出ましたが、台風が相次ぎ、梅雨のような天気続きで、先週からようやく夏らしくなったものの暦の上ではもう秋ですから気持ちの上では、どうもすっきりしないのではないでしょうか。

 すっきりしないと言えば、離婚を考えるに当たり、離婚後の生活設計もなかなか明確にし難い問題です。
 今回は、離婚後の生活について考えてみたいと思います。

Q14: 離婚した後、経済的にやっていけるか不安に感じています。分割された年金で生活できるでしょうか?

A14-1: 分割で得られる年金額
 離婚時年金分割で、どのくらい年金が得られるでしょうか?夫が年額300万円の年金(老齢基礎年金が120万円で、老齢厚生年金が180万円)を受け取る場合について考えてみましょう。

 わが国の年金制度は、国民年金(基礎年金・1階部分)、被用者年金(厚生年金・共済年金・2階部分)、企業年金等(3階部分)の3階建ての構造をしており、分割の対象となるのは、2階部分ですから、この例であなたがもらえるのは、年額、最大で180万円の半分の90万円、月額では、7万5000円になります。

 もっとも、これは夫が厚生年金の保険料を納付していた期間と結婚していた期間が同じだった場合の金額です。分割の対象となるのは、夫が支払った保険料納付実績(保険料納付記録)のうち、婚姻期間中の部分だけですので、通常は月額7万5000円より少なくなります。

 年金事務所に請求すれば分割の対象期間、夫婦の対象期間標準報酬総額等の情報通知書を交付してもらえますので情報提供の請求をして確認してみると良いでしょう。
 情報提供の請求については、Q&A離婚時年金分割制度(5)をご覧下さい。

A14-2: 受給資格の問題
 次に、考えなければいけないことは、老齢厚生年金の受給資格を充たしているかという問題です。受給資格は、国民年金の老齢基礎年金の受給資格があること、即ち、保険料納付済み期間あるいは保険料免除期間などの合計が25年以上あり、原則として65歳以上であることです。

 ですから、離婚時点で受給資格がある方は、分割された年金額を基礎にその後の生活設計を立てることが出来ますが、未だ受給資格を充たしていない方は、現時点では、分割された年金を受け取れないので、受給できるようになるまでの収入や資金を考えて生活設計を立てなければなりません。

A14-3: シミュレーションの必要性
 持ち家があるのか、賃貸になるのか、手持ち資金はどのくらいあるのか、収入は得られるか、月々の生活費はどのくらいかかるか、病気の時など急な出費があっても賄えるだけの余力はあるか、自分が求めている生活水準を維持できるかなど、具体的に考えシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。

弁護士 石黒麻利子