みなさんは、自分の夫や妻が不貞行為をしていたらその不貞相手に怒りを感じませんか?
配偶者の不貞行為を原因とする法律相談を受けていると、やはり、多くの人が不貞相手に怒りを感じています。その怒りを法的に解消するには、不貞相手に慰謝料を請求する方法が一般的です。
でも、この慰謝料請求は、不法行為(民法709条)を法的な根拠としますので、3年で時効消滅してしまいます。では、配偶者の不貞相手への慰謝料請求権の消滅時効はいつから進行するのでしょうか?
最高裁平成6年1月20日判決は
「夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同せいにより第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同せい関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当である。けだし、右の場合に一方の配偶者が被る精神的苦痛は、同せい関係が解消されるまでの間、これを不可分一体のものとして把握しなければならいものではなく、一方の配偶者は、同せい関係を知った時点で、第三者に慰謝料の支払いを求めることを妨げられるものではないからである。」
と判断しました。
つまり、最高裁は、配偶者の不貞相手への慰謝料請求権は、不貞行為をされた配偶者が、不貞相手と配偶者の同棲関係を知った時から進行すると判断したのです。その理由として、①不貞行為をされた配偶者の精神的苦痛は、同棲関係が解消されるまで、不可分一体のものではないこと、②不貞行為をされた配偶者は、同棲関係を知った時点で、不貞相手への慰謝料請求をすることができることを挙げています。
上記判例は、不貞行為を継続的不法行為にあたると判断したものと考えられます。継続的不法行為は、通常は、個々の不法行為が継続的に行われ、損害も個々の不法行為によって継続的に発生するものと考えられています。そうすると、継続的不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、個々の不法行為により発生した損害を知った時から個別に進行することになります。
上記判例は「不可分一体のものとして把握しなければならないものではなく」と述べていますので、不貞行為を継続的不法行為と考えて、不貞行為をされた配偶者が、同棲関係を知った時から慰謝料請求権の消滅時効が進行すると判断したのだと思います。
この判例を前提とすると、同棲関係を知ったら、できるだけ早く不貞相手に慰謝料を請求する必要があるということになりそうです。もっとも、この判例のあとに、不貞行為の相手に対する慰謝料請求権の消滅時効の進行する時点について、少し異なった判断をした裁判例があります。次回は、この裁判例について検討したいと思います。