前回の記事で、夫名義の不動産を妻に財産分与する場合に、取得時よりも財産分与時に不動産の価格が上がっている場合には、分与をする夫に譲渡所得税が課税されることをご紹介しました。
(前回の記事はこちら:財産分与したら課税される?)
今回は、譲渡所得税が課されない場合若しくは特別控除が認められる場合についてご紹介したいと思います。
まず、①不動産価格に相当する金銭を財産分与する場合です。
所得税基本通達33条1項が、譲渡所得税の対象となる財産について規定していて、金銭または金銭債権で支払われる場合には、分与者は譲渡所得税を課税されないことになっています。ただ、この場合ですと、それなりのお金がないとだめですね。
次に、②分与者が相当の期間に渡って所有していた不動産を財産分与する場合です。
所得税法基本通達33条3項は、相当の期間に渡って継続して所有していた不動産の譲渡による所得については、譲渡所得にあたらないと規定しています。ただし、この「相当の期間」がどれくらいのか明示されておらず、どれくらいの期間を「相当の期間」というのかが不明です。
同じ規定に、「極めて長期間」引き続き所有していた不動産の譲渡による所得については、譲渡所得にあたることが規定されているのですが、この「極めて長期間」が目安になると思います。「極めて長期間」は、「おおむね10年以上をいう」と規定されているので、これからすると、「相当の期間」は1年以上10年未満くらいではないかなと思います(あくまでも予測です…)。
最後に、①も②もダメという場合は、③優遇措置を受けましょう。
租税特別措置法35条1項は、分与者が居住用に使っていた土地建物を分与する場合であれば、離婚届の後に財産分与をすることによって、譲渡所得の特別控除が受けられることが規定されていますので、この優遇措置を受けるようにしましょう。この優遇措置で1つ気をつけてほしいのは、「離婚届の後に財産分与をすること」です。離婚が成立する前に財産分与だけを先にした場合には、優遇措置は適用されませんので気をつけましょう。
弁護士 竹若暢彦