② 前回の後遺障害等級との差額に制限されうる
前回より上級の後遺障害等級が認定された場合でも、相手方から、今回の後遺障害等級を基にした損害額から前回の後遺障害等級を基にした損害額を控除した額に損害が限定されるべきだとの反論が出てくることは容易に想定されます。理屈を言えば、後遺症による逸失利益や後遺症慰謝料は、症状固定(これ以上治療を続けても症状が回復しないと判断される時点)後も一定の症状が残り続けることをふまえて認められる損害であるから、例えば、前回14級、今回12級の場合、今回の逸失利益や慰謝料のうち14級相当額については前回に支払われているだろう、ということです。
もっとも、このような反論が出たとしても、画一的に差額分しか認められないというわけではありません。例えば、前回の事故からだいぶ期間が経過しており、症状が落ち着いてきた矢先に再び事故に遭遇した場合には、事故間の期間の長さや今回の事故前の症状などを主張することで、差額以上の損害額が認められる可能性があります。
また、むち打ち症の場合、逸失利益の計算において、はじめから労働能力喪失期間が5年程度に限定されることが多いので、その期間経過後の事故においては、前回の事故の損害額は控除すべきでないと主張することも可能だと考えられます。
以上のように、再び交通事故にあい、前回と同じけがを負ってしまった場合、損害額が争われやすいですが、決して定型的に基準にあてはめて損害額が算定されるわけではなく、個々の交通事故や被害者の状況などをふまえて、交通事故による被害を回復するのに適切な損害額が算定されます。したがって、適切な損害賠償を得るためには、具体的な事故状況や被害者の症状などを上手に主張していくことが重要となります。主張の仕方によって、認められる損害額も変わりうるので、ネットなどの情報だけでなく、一度直接専門家にご相談されることをおすすめします。