1.追突事故の過失割合

 追突事故は、追突車の一方的過失(100:0)とされることが大半です。もっとも、個別の事情が一切考慮されないというわけではなく、例外的な場合には被追突車側に過失が認定される場合もあります。今回はいくつかの裁判例を挙げてみたいと思います。

2.追突車側の注意義務

 運転者には安全運転義務(法70条)が課されています。前方注視義務はここから導出されるものです。
 さらに、同一車線を進行する後続車には、車間保持義務(法26条、「直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を・・・保たなければならない」)も課されています。
 実質面から見ても、後方からの衝突に対し、被追突車が回避行動をとることは通常困難でしょう。したがって、追突車の一方的過失との結論が左右されるためには、例外的な事情が求められてしまうのです。

3.典型例と基本過失割合

 被追突車側に一定程度過失が認定される事案の典型例が、被追突車側が理由なく急ブレーキをかけたというものです。道交法24条は、「危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」と規定しているからです。

 被追突車側に法24条の違反が存する場合の基本過失割合は被追突車30、追突車70とされています(別冊判例タイムズ38、民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版、294頁【154】図参照)。
 もっとも、急ブレーキをかけた理由の如何や、具体的な事故態様等によっては、この割合も左右されうるところです。今回紹介するのは、“被追突車”につき、一方的過失を認定した裁判例①と、一部の過失の認定にとどまった裁判例②です。