診断書や医療記録(カルテ)の記載内容は、示談、後遺障害認定及びその他の損害認定において、重要な影響を与えます。

 もっとも、医師は、基本的には、患者の治療を考えており、治癒が目的であることから、診断書の記載内容にはさほど重きを置かないといえます。まして治療後の損害賠償のことを考えて診断書や医療記録を記載している場合はあまりないといえます。

 しかし、損害賠償という点からは、後遺障害の有無や程度のみならず、事案によっては治療の必要性、事故との因果関係の争いが生じる可能性があります。

 そこで、治療や後遺障害診断の過程で医師と面談し、診断書やカルテに、症状や原因につき具体的な記載をしてもらうよう求める必要が生じる場合があります。
 たとえば、症状が他覚的なものなのか、自覚的なものなのか。他覚的所見、医学的根拠にわたる部分については、詳細な記載をしてもらうことが有益です。
 また、後遺障害の認定場面では検査結果のみならず患者の一貫した主訴が重要な場合もあることから、医師があまり重視しない主訴についても、きちんと事実を記載してもらうことが必要な場合もあります。
 さらに、可動域制限はどの程度存在するか、痛みの程度、事故との因果関係、レントゲンやMRI検査結果の評価なども重要となります。

 治療途中では、症状固定時期や後遺障害の認定において争われることに備え、上記のような記載をしてもらうことや、現在の治療が効果を生じている旨を具体的に医療記録(カルテ)に記載してもらうこと、後遺障害となる可能性があるものについては必要な検査の実施をしていくことが望ましいといえます。

弁護士 髙井健一