交通事故前に、既往症があり、交通事故により、その症状がひどくなった場合等、損害賠償額はどうなるのでしょうか。

 よく問題となるのは、交通事故により、ヘルニア等の診断を受けたところ、交通事故前からヘルニアを持っていたような場合です。
 この点、既往症は「体質的・身体的素因」とされ、損害賠償額から、損害の発生又は拡大に寄与した分を、その寄与割合に応じて、過失相殺の規定を類推適用して減額されることとされています。
 しかし、既往症があっても、裁判例の中では、当該既往症が訴因減額の考慮の対象でないとして、素因減額を否定したものがあります。

 今回は、素因減額を否定した大阪地方裁判所平成20年3月11日付判決(平成19年(ワ)第2234号損害賠償請求事件)を紹介します。