1.悪質な加害者について
最近、埼玉県鴻巣市で発生した死亡事故の加害者が、ひき逃げをしたことがニュースになりました。また、前回のブログで取り上げたように、北海道砂川市で起きた死亡事故の加害者は、酒気帯び運転の基準値を上回るアルコールが検出されたとの報道もありました。
このような、加害者側の悪質な事情は、被害者が請求できる慰謝料に影響を与えます。
今回は、過去に慰謝料に影響を与えた加害者側の悪質な事情(飲酒運転以外)について、いくつか具体例を紹介したいと思います。
2.慰謝料へ影響を与える加害者側の事情
(1)ひき逃げ(救護義務違反)
過去の裁判例では、被害者の生存を確認しながら、何ら救護措置を取らなかったこと等を考慮し、慰謝料額を認定した事例があります(東京地判平成14年4月18日)。
(2)無免許運転
過去の裁判例では、ひき逃げ事例であることだけではなく、無免許運転でもあったことを考慮して、慰謝料額を認定した事例があります(神戸地判平成20年3月21日)。
(3)事故態様
過去の裁判例では、加害者が、被害者に衝突した後、停車したものの車を降りて確認することなく再発進したため、被害者を引きずり、遺体に多数の損傷を与えたという事故態様の悲惨を考慮して、慰謝料額を認定した事例があります(東京地判平成17年12月19日)。
(4)事故後の加害者の態度
過去の裁判例では、加害者が路上に転倒した被害者を怒鳴ったうえ、救護に当たることなく煙草を吸っていたこと等の事故後の態度の悪さを、現場に居合わせた姉と妹の慰謝料額を認定するにあたって考慮した事例があります(横浜地判平成12年5月11日)。
3.おわりに
このように、加害者側に、交通事故を引き起こしたこと以上の悪質な事情があり、被害者側に、一般的な慰謝料では評価しきれないほどの精神的苦痛が生じたと裁判所が評価した場合には、慰謝料の額に影響することがあります。