こんにちは。
 今日は、例外的に物損に関する慰謝料が認められる場合について、お話したいと思います。

 交通事故の物損に関連する慰謝料は、原則的に認められないとされています。しかし、民法第710条によれば、財産権侵害の場合にも、財産権以外の損害、すなわち慰謝料が認められる余地があるのです。

 裁判例をみても、一般的には財産上の損害が賠償されれば同時に精神的苦痛も慰謝されたとみられるとしますが、「特別の事情」がある場合には、物損に関連する慰謝料が認められているものがあります。

 上記「特段の事情」が認められる場合として、まず、被害物件が被害者にとって特別の主観的・精神的価値を有する場合が挙げられます。ただし、これは、その主観的・精神的価値を有することが社会通念上も認められることが必要とされます。

 たとえば裁判例で被害物件の主観的な価値を認めたものとして、可愛がっていたペット、墓石、代替性のない芸術作品などがあります。一方、被害自動車そのものについては、なかなか認められにくいようです。
 さらに、被害物件そのものの主観的な価値ではありませんが、住宅の損傷の場合のように、被害物件の損傷に伴い、生活の平穏を害されたような場合にも慰謝料が認められたケースがあります。

 また、加害行為が著しく反社会的、あるいは害意を伴うなどのため、財産に対する金銭賠償だけでは被害者の著しい苦痛が慰謝されないような場合も「特別の事情」に当たる余地があります。

 たとえば、飲酒運転など事故態様が極めて悪質な場合、当て逃げなどの救護義務違反がある場合などが挙げられます。なお、物損については、慰謝料は認められないのが原則であるため、加害者側の一方的な過失であるという程度の事情では、特別の事情とは認められないのではないかと思います。

 なお、物損に関する慰謝料が認められた場合の額については、数万から数十万円程度が認められているようです。

 以上のとおり、物損に関連する慰謝料請求は、決して容易ではありませんが、全く認められないわけではありません。そのため、物損に関する慰謝料を求めたい場合には、詳しい事情を専門家に相談してみるとよいと思います。