皆さん、こんにちは!相変わらずの猛暑続きですが夏バテなどしていませんか?連日35度を超す暑さで、この頃では、気温30度でも「今日は涼しい♪」と感じるのは私だけでしょうか?!
 さて、お盆休みを間に挟み、久しぶりですが、「離婚時年金分割制度」覚えていらっしゃいますか?

 前回までは、離婚時年金分割制度に、「合意分割」と「3号分割」の2種類があること、及び、合意分割の方法についてお話ししました。(前回の記事はこちら:離婚時年金分割制度(5)
 今回は、「事実婚」の場合の合意分割について解説します。

事実婚の場合の合意分割の要件

 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情(事実婚関係)にあった者の一方が被用者年金に加入し、他方がその被扶養配偶者として国民年金法7条1項3号に規定する第3号被保険者と認定された期間(事実婚第3号保険者期間)については、年金分割の対象となります。

※第二号被保険者の配偶者であつて主として第二号被保険者の収入により生計を維持するもの(第二号被保険者である者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち二十歳以上六十歳未満のもの(以下「第三号被保険者」という)。

 事実婚関係にあったか否か、対象期間、解消の有無・解消時点は、社会保険庁長官等により認定される事項で、家庭裁判所が認定するものではありません。事実婚関係の解消日は、「年金分割のための情報通知書」に記載されます。

 事実婚の解消も、離婚と同様、年金分割の対象になり得ますが、事実婚の場合、分割の対象となる「婚姻関係と同様の事情」にある期間の認定が難しい点が問題となります。

 しかし、事実婚関係にある者の一方が被扶養配偶者として第3号被保険者と認定された期間があるときは、その期間の始期・終期は明らかです。そこで、事実婚期間のうち、一方が被扶養配偶者として第3号被保険者であった期間に限り年金分割の対象期間とされることになりました。

法律婚との関係

 同一当事者間で、事実婚から法律婚に移行した場合は、事実婚第3号期間と法律婚の婚姻期間を通算して対象期間とされます。この場合、法律婚が解消した時点で初めて分割が可能となり、事実婚部分だけを先に分割することはできません。

 これとは逆に、同一当事者間で、法律婚から事実婚に移行した場合は、法律婚解消までの期間と、事実婚第3号期間の各々が別々の対象期間となり、法律婚解消時点で、その分の分割が可能となります。その後、事実婚が解消した時点で、その分の分割が可能となります。

 夫が婚姻中、他の女性と事実婚状態にあり、夫の保険料納付記録を妻と他の女性で分ける場合の優劣関係は、強い順に、事実婚第3号期間>法律婚>第3号期間以外の事実婚となります。

 事実婚第3号期間と認定されるためには、当事者間に社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係があるものと認められる必要があります。認定されれば、法律婚に優先するものとされます。

 例えば、婚姻期間40年のうち、11年目以降、夫が他の女性と事実婚状態になり、事実婚第3号期間の認定が11年目以降30年目までという場合、事実婚第3号期間が優先して分割対象となり、最初の10年と最後の10年の通算期間は、法律婚が優先し、夫と妻との間で分割対象となります。

弁護士 石黒麻利子