早いもので、今年もあと1か月を残すのみとなりました。クリスマスに忘年会、年賀状作りとイベントが色々あって、なにかと気忙しいですね。

 さて、今回は、以前「請求すべき按分割合を定める基準」のところで解説した「特別の事情」について補足します。

 法律の条文上、請求すべき按分割合は、「対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情」を考慮して定めるとされています。「寄与の程度」について、家庭裁判所は、特別の事情がない限り、互いに同等(2分の1ずつ)と見るべきものと理解していますが、「特別の事情」がどのようなものかについては、個別事案における判断に委ねるとされ、実は、現時点ではよく分かりません。

 でも、何も分からないのでは困りますね。そこで、参考までに、とある家庭裁判所裁判官の見解を以下に引用します。

 某裁判官曰わく、 

 「『特別の事情』に関しては、これから様々な事例を通して判断していくより仕方がないわけですが、その際、原則の2分の1という考え方をどういうふうに受け止めるかによっても、その例外を認める幅をどれぐらい緩やかに見るか、せまく見るかということにも影響しましょうし、2分の1から修正するにしても、どの程度修正するのかということについても、原則の重みによっても影響するところもあるんじゃないかというふうに思います。それから、別居の期間とか原因については、3号分割の制度があって、その施行の前後、3号分割が施行される前後で、じゃあ何かそういう寄与の実態が大きく変わるのかというと、そういうわけでもないんだろうと思うんですね。そういうことになると、そこのあとの2分の1というのが控えているということは、1つ影響してくるんじゃないかと。ですから例外に関しては、結局、信義則とか公平とかいうところからケースごとに考えるということになりますので、そういう観点から、主張、立証の方をしていただくと。ただまあ、原則2分の1ということの受け止め方が重いというふうに見れば、例外を認める範囲はかなり狭くなっていくということは十分考えられるということでございます。

 また、年金の見込額の点は、例えば社会保険労務士の方に相談するというのも1つの方法としてはあるのかもしれません。ただし、50歳以上の方については年金見込額照会制度が適用されますが、それ以外の方については、要するに年金支給開始年齢である65歳までに、あと15年以上あるわけで、その先の部分を見通すというのは、仮に今こうなると言っても、その予測をどう裁判において使うかというと、ちょっと審判とかで使うというのは、なかなか難しいのかなと。ただまあ、何の手がかりもないと、話し合いをしにくい面もあるというのも理解できますのでそういう意味での使い方というのはあるのかなと思うんですが、ただそれでストレートに審判とかできるかというと、ちょっと難しいのかなということですね。

 もう1点は、調停でも、原則2分の1の方に調整していくことが多くなるのではなかろうかということが予測されるということでございます。」

 少し、「特別の事情」についてイメージを持っていただけたでしょうか?

 今回で、「離婚時年金分割制度」についての一通りの解説が終わりました。
 次回から、離婚時年金分割制度について更に詳解した新シリーズを始めます。
 ※今回までの解説は、弁護士実務研修講義録VII「離婚時年金分割制度について」(愛知県弁護士会研修センター運営委員会)を参考にさせていただきました。

弁護士 石黒麻利子