こんにちは!前回、「離婚時年金分割制度(4)」で、離婚時年金分割制度には、合意分割と3号分割の2種類があることをお話ししました。
 今回は、合意分割の対象及び方法について解説いたします。

合意分割の対象及び方法

(1) 平成19年4月1日以降の離婚に適用され、合意分割の対象となる期間は、婚姻期間です。
(2) ①当事者が分割の請求をすること、及び、その按分割合について合意したとき、②当事者間で協議が調わないときに当事者の一方の申立により家庭裁判所が按分割合を定めたとき、離婚分割を請求することができます。
(3) 按分割合の範囲は、「分割割合の下限を超え、50%以下」で、年金分割のための情報通知書に記載されます。

 例えば、婚姻期間中の対象期間標準報酬総額が、夫1億8000万円、妻1億2000万円という場合を例に考えてみます。

 対象期間標準報酬総額とは、保険料納付記録(分割対象)に一定の操作を加えたもの(過去の報酬を現在の賃金水準に置き換えるもの)で、「再評価」と呼ばれます。

 年金分割は、対象期間標準報酬総額の多い方から、少ない方に分割されます。

 この例では、夫から妻に分割されます。あげる側の人を「第1号改定者」、もらう側を「第2号改定者」といいます。

 どういう割合で分割するかを示すのが、分割割合(請求すべき按分割合)で、分割を受ける方(本例では、妻)が、分割の結果、夫婦各々の対象期間標準報酬総額の合計額の何割を占めるかを示す数値です。

 分割割合は、許容範囲が法律で定められており、その範囲内で決める必要があります。許容範囲を逸脱する分割割合を定めて合意しても、その割合に応じた年金分割をすることはできません。

 分割割合の上限は、50%です。

 分割割合の下限は、この例に当てはめると、分割を受ける妻の対象期間標準報酬総額1億2000万円を、夫婦各々の対象期間標準報酬総額の合計額3億円で割った値0.4を超える額となります。

 分割割合の下限=1億2000万円/(1億8000万円+1億2000万円)=0.4を超える。

 仮に、分割の割合が0.5の場合、この例では、  夫(第1号改定者)の対象期間標準報酬総額は、分割後、1億5000万円で3000万円減となります。妻(第2号改定者)の対象期間標準報酬総額は、分割後、1億5000万円で3000万円増となります。

 夫婦各々の対象期間標準報酬総額や、分割割合(按分割合)の範囲は、「年金分割のための情報通知書」に記載されます。

 年金分割の請求には、期間制限があります。  離婚をした日の翌日から起算して2年を経過したときは、原則として、社会保険庁等に対する年金分割の請求をすることができません。例外については、次回以降で詳述します。

弁護士 石黒麻利子