結婚してから、夫婦だけで住むというパターンも多いとは思いますが、夫婦の一方親族と一緒に同居することってありますよね。そうすると、とくに配偶者の親族、例えば配偶者の父母らと同居した場合に、それらの親族とうまくいかないということがあるものです。

 また、最近では、別居していても夫婦の間に親族が介入して紛争となってしまうこともあるようです。

 では、配偶者の親族との不和を理由として離婚はできるのでしょうか。民法における離婚原因としては、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条5号)にあたるか否かが問題となってきます。

 裁判例をみてみると、単に親族との関係が悪化しているというだけでは離婚原因があるとは認められていないようです。

 例えば、夫が、夫婦の家に度々出入りしていた妻の母親から「あんたは挨拶ができない」「ここから落ちて死んでしまえばいい、馬鹿だったら死ぬわけはないけれど」といった趣旨のことをいわれたり、妻とその母親が夫に断りなく夫婦宅の増築計画をしたりし、その後2年5か月余りの別居に至った事案について、離婚原因があるとは認めなかった裁判例(東京地裁平成17年1月26日平成15年(タ)判タ862号)があります。この裁判例の判断理由は大要次のようなものです。

 夫婦が別居に至った主な原因は、夫と妻の母親の人間関係の悪化にあると認定したうえで、別居前に約6年間の夫婦生活の継続があり、別居期間が同居期間と比較してさほど長期に及んでいるとまではいえないこと、妻とその母親が夫婦関係修復に積極的な態度を示していること、幼少の子供達の養育には夫婦の協力が欠かせないこと、夫婦がこれまでの行動や態度を反省して相手方との生活をやり直す努力をするのであれば、婚姻関係の修復について妨げとなる事情がないこと等から、婚姻関係の修復が不可能とはいえないとしました。

 この事案は、妻もその母親の言動に同調している面があり、夫が夫婦関係を継続することに困難を感じたというのも納得できるように思えますが、幼い子供がいることや、あくまで親族との関係が問題となっていて、夫婦間の問題が直接の離婚原因とされてはいないこと等から、離婚原因があるとは認められなかったようです。

 やはり、配偶者の親族との不和という問題は、夫婦間の問題ではない分、夫婦関係の修復可能性について慎重に探っているように思われます。