外国人の妻が、外国に居住している場合、日本の裁判所で離婚調停・離婚訴訟できるのか否かという問題があります(国際裁判管轄の問題)。

 家事関係の国際裁判管轄については、法律の規定がないので、実務上判例に従っています。そこで判例を見てみると、原則として被告の住所地国(=外国)に管轄権があるとています。
 ただ、例外的に原告が日本に住所を有していて、原告が遺棄された場合、被告が行方不明である場合、その他これに準ずる場合には、日本の裁判管轄を認めると判示されています。
 すなわち、原則として外国人妻の住所のある外国で調停・裁判しなければならない、例外として、原告が日本に住所を有し、かつ、原告が遺棄されたなどの事情があれば、日本でも調停・裁判をすることができるとの扱いになっています。

 そこで、例外的な場合とされる「遺棄された場合」「被告が行方不明である場合」「これに準ずる場合」について考えてみたいと思います。

 「遺棄された」については、代表的な例として、配偶者が原告を残して日本国外に去った場合があります。

 「行方不明」については、行方不明の期間は、一般的に3年以上行方不明であれば該当すると考えられているようです。配偶者が外国に居住していることはわかっているが、長年住所がわからない場合には、「行方不明」と判断されます。

 「その他これに準ずる場合」については、これまでの判例では、配偶者が国外追放になった場合、日本法では夫婦だが外国法上夫婦でなく外国法で離婚ができない場合、外国ですでに判決が出て離婚できているため当該外国で裁判ができない場合に日本で裁判することができました。

 このように、外国に住む外国人配偶者との離婚については、本筋の離婚についての調停・裁判のまえに、日本で裁判できるのかどうかという問題を抱えているのです。
 外国人配偶者との離婚については、どこの法律に従うべきかという問題もあり(準拠法の問題)、外国人配偶者との離婚は一筋縄ではいきません。お困りの方は、お気軽にご相談ください。

弁護士 江森 瑠美