私たちが不貞事件に関してお話をお聞きする時、ご相談者様から、「私も、インターネットで調べて、相場が○○円だということは知っているんですけれども・・・」「先生、これは相場から見て高すぎると思うんですけど・・・」などと言われることがあります。

 「相場」とは何でしょうか。それは、今までの交渉結果の集積です。

 不貞慰謝料に関して交渉をご依頼される方というのは、本当に様々なご事情を抱えておられますから、結果だけ見ていても、正しく「相場」をつかまえたことにはなりません。できる限り自分と似た条件で交渉をしている方についての交渉結果、「相場」を見る必要があります。

 たとえば、「先生!私、夫に浮気されたんです!夫と相手の女はラブホテルに行ったこともあるようです!この場合、最後まで行っちゃったんだから慰謝料の相場は300万円ですよね!まずは女の方に請求してください!」というご相談を受けた場合、そのご相談者様が正しく「相場」をつかまえているか疑問です。夫が浮気してラブホテルに行った、という点以外にも、そのご相談者様の慰謝料算定に必要な情報は、まだまだあるのです。

 浮気の期間・回数、婚姻の期間、結局ご相談者様が夫とは関係を再構築するのか別れるのか、夫の浮気の前後での家庭での状況はどんなふうだったのか、相手の女がご相談者様の家庭状況をどのような資料に基づきどう認識していたか、証拠の強さ、・・・まだまだ。

 これらは、受任後さらに調査を深めなければ明らかにならないこともあります。私たちは、ご相談をお聞きしながら、どういうご事情があるからどの条件のどの相場に近づけるべきかを考えます。

 「なるほど、お二人の婚姻期間は8年、奥様は妊娠6か月で、ほかに3歳のお子さん1人がいらっしゃるのですね。旦那さんは3年前までは定時で帰って来て、家族の面倒をよく見ていたけれども、その頃から急に夜勤が増えたかと思っていたら、実は3年前から浮気をしていて、1週間に2回は女とホテルに行っていたということですね。証拠はホテル前での2人の写真と、半年前からのメールのやり取りがありますね。相手の女は、旦那さんが既婚者だとはっきり分かっておられたようですね。そして、奥様としては、今後旦那さんを信じることはできないから離婚をしようと考えていて、もう緑の紙は出す準備ができている、別居はしているということですか。」(※これは今私が考えた架空事例です。)

 ここまで聞き取れたら、弁護士は頭の中で、相当高めの相場に近づけられると考えるでしょう。あとは、浮気相手と夫の資力や、どちらに対してどの程度請求するかのバランス、相手がどれだけ裁判を嫌がりそうか等も考えながら、落ち着きどころ・請求額を考えます。

 相手方から不貞慰謝料を請求されているという場合にもそうです。
 ご依頼者様から聞いたお話と相手方の請求額や書面の内容などから見て、どの程度の確信をもって相手方が請求をかけてきているのか、どの相場に乗せようとしているのかを見極めて交渉を行うことになります。

 この相場算定・見極めに関しては、各弁護士の経験・力量はもちろんですが、なにより、事実をどれだけ丁寧に聞き取ったかよるところが大きいです。

 私たちは、ご依頼者様に寄り添い、お話を丁寧に聞きながら、正しく事案を見極めて交渉を行います。お困りの際にはぜひ、ご相談ください。