幸せを望んで婚姻関係に入った夫婦が離婚する……残念なことですが、珍しいことではありません。平成25年の統計によると、1年間の離婚件数は23万1383組にのぼります。

 離婚は、離婚をするかどうか自体が争いになるばかりでなく、離婚をすること自体に合意しても、子供の親権をどうするか、財産分与、養育費、あるいは慰謝料をどうするかなど、当事者にとってなかなか合意し難い多くの要素をはらんでいます。

 「結婚するより離婚する方が、より多くの体力・精神力を消費する」などといわれるのはこのためです。

 離婚原因が、一方の配偶者のいわゆる不貞行為にある場合、慰謝料の支払い及びその額が大きな争点になることがしばしばです。また、配偶者間での慰謝料請求のみならず、不貞の相手方、いわゆる不倫相手に対して慰謝料請求が行われることも多くあります。

 この慰謝料請求は、基本的に法律的には、不法行為による損害賠償請求の一種と考えられています。例えば、夫が浮気をした場合、夫とその浮気相手が共同して妻に対して違法な行為を行い、精神的に損害を与えたと考えるのです。

 ある行為が、不法行為法上の違法な行為と言いうるためには、その行為が何らかの法律上保護されるべき権利を侵害している必要があります。配偶者による暴行や虐待(いわゆるDVなど)がある場合はこの典型ですし、不貞行為も一般にこれにあたると考えられています。

 では、離婚の際の慰謝料請求の場合、どのような権利が侵害されているのでしょうか。

 不貞行為について判例は、「婚姻共同生活の平和の維持という権利」を挙げています。配偶者の一方と浮気相手が、その夫婦の婚姻共同生活の平和を害することが違法な行為にあたるとされるのです。

 ここから、不貞行為などがあった時点ですでに夫婦の婚姻関係が破綻していた場合には、その不貞行為は、原則として不法行為にはならない=すなわち、慰謝料請求権を発生させないという判例の考え方も出てきます。夫婦関係が破綻している場合、もはや保護されるべき「婚姻共同生活の平和」はなくなっていると思われるからです。

 それでは、どのような行為が婚姻共同生活の平和を害するとされるのでしょうか。

 代表は不貞行為です。判例は不貞行為を「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と定義しています。ここでは、「性的関係」という語句が用いられていますので、肉体関係の存在が念頭に置かれていると思われます。

 では、肉体関係がなければ不貞で慰謝料を請求されることはないのでしょうか。
 必ずしもそうとはいえません。

 不貞行為は、夫婦共同生活の平和を害する代表的な行為、いわば指標として機能しているだけです。したがって、肉体関係がなくとも、慰謝料を請求する側が、被告に原告の保護されるべき夫婦共同生活の平和を侵害する社会的相当性を欠いた違法な行為があったことを立証すれば、慰謝料請求が認められる可能性があります。

 いかなる行為が不貞行為、ないしそれに類する行為となるかは簡単には判断できません。また、立証が可能かどうかについても多くの問題があります。

 こうした問題でお困りの方は、ぜひ、弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。