1 はじめに

 弊所では「夫が浮気をしたので浮気相手から慰謝料をとりたい。」等の不貞慰謝料請求のご相談を数多く受けていますが、その中にあるご希望の一つに、夫が妻と別居し、夫と浮気相手が同棲している状況下で、裁判をやって夫の浮気(同棲)を強制的に止めさせたい、というものがあります。

 今回は、こうしたご希望を裁判(法律)で強制できるか否かについて解説したいと思います。

2 人格権に基づく差止請求

(1)直接的に不貞を止めさせる法的手段としては、人格権に基づく差止請求を行うことが考えられます。

 人格権に基づく差止請求は、法律の条文に規定されているわけではありませんが、個人の人格的生存に不可欠な権利利益を保護すべく、解釈により実務上認められている権利です。原発の運転差止請求事件等で用いられる法律構成です。

(2)しかしながら、差止請求は、あくまで「人格的生存に不可欠な権利利益を保護」するものですので、単に違法行為であれば直ちにその対象になるのではなく、事後的な金銭賠償では回復できないような権利利益(身体の安全、名誉等)に対象が限定されています。

(3)結論から言うと、不貞行為(同棲等)の差止についても、事後的な金銭賠償で回復可能だと評価されて、差止請求が認められない可能性が高いと思われます。

 この点について、大阪地裁平成11年3月31日判決は、

「差止めは、相手方の行動の事前かつ直接の示止という強力な効果をもたらすものであるから、これが認められるには、事後の金銭賠償によっては原告の保護として十分でなく、事前の直接抑制が必要といえるだけの特別な事情のあることが必要である。」

と述べた上で、本件において、配偶者と被告(浮気相手)の同棲が継続することで、原告の婚姻生活は直接的に侵害されず、侵害されるのは専ら原告の精神的平和であって、これは事後の金銭賠償が可能であると評価し、原告の差止請求を棄却しました。

3 まとめ

 上記裁判例のように、多くの不貞の案件では、差止請求は認められない可能性が高いので、不貞を解消させるには、現実問題として、慰謝料請求訴訟や強制執行手続により、間接的に不貞解消を促すほかないかと思われます。是非弁護士へお気軽にご相談下さい。

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弁護士 森 惇一