今回は、養育費の支払いと扶養控除についてお話したいと思います。
 普通よく耳にされる(かどうかはわかりませんが)、扶養に入れる、入れないというあの話に関するところです。

 扶養控除というのは、所得税法84条に定められています。扶養親族がいるときは、確定申告の際、総所得金額(厳密ではないですが、平たく言うと、総収入のことです)から、扶養親族1人につき38万円が控除できるという制度です。Aさんが、娘Bさんを扶養親族としているとき、「BさんはAさんの扶養に入っている」という言い方をするのです。

 扶養に入っているお子さんには、奨学金等の場面で、有利な制度の利用ができる場合があります。

 では、「扶養に入る」=「扶養親族となる」ためには、どういう要件が必要なのでしょうか。法の定義では、扶養親族とは、「居住者の親族…で、居住者と生計を一にする者のうち、合計所得金額が38万円以下である者」とされています(所得税法2条1項34号)。

 「生計を一にする」とはどういうことでしょう。言葉のイメージからすると、同居していなければいけないような感じがします。しかし、たとえば、離婚して養育費を支払っている親の場合、子とは別居しているでしょうが、これは「生計を一に」していないのでしょうか。

 通達(所基通2-47)では、「生計を一にする」というのは、一つ屋根の下にいる場合は原則的に肯定です。別居していても、学費等の仕送りをしていたり、長期休暇中にはだいたい帰ってきたりするという場合には、やはり肯定するとされています。

 これで行くと、たとえば遠くの学校に子どもを通わせている場合や単身赴任の場合は扶養に入れそうですね。

 そして、離婚している親であっても、養育費を支払っていて、それが次の2条件をいずれもみたす場合には、「生計を一に」しているといえ、扶養に入れるものとされています。

① 扶養義務の履行として支払われる場合
② 子が成人に達するまでなど一定の年齢等に限って支払われる場合

 たいていの養育費についてはこれらの要件をみたすでしょうが、これらの要件を充足していることが税務署にとって明確である必要があります。また、片方の親が既にお子さんを扶養に入れていれば、他方の親が同じお子さんを扶養に入れることもできません(所得税法85条5項)。ご不安であればぜひ、私たち弁護士にご相談ください。