1 はじめに

 離婚を巡るトラブルの中でも子の奪い合いを巡るトラブルは折り合いがつかない事案が多く、たとえ調停や審判において面会交流をすることが親権者に義務付けられた場合であっても、親権者が子供を非親権者に一切会わさないという態度に出て面会交流が全く実現しないというケースが多く存在します。

 今回は、このようなケースにおいて、非親権者が子との面会交流を実現するための方法について解説します。

2 間接強制決定

 調停や審判で面会交流を実施することが確定しているにもかかわらず、親権者が面会交流の実施に協力しない場合、非親権者は、裁判所に申し立てることで、「面会交流不履行1回あたり金5万円を支払え」というような決定を出してもらうことができます。このように、面会交流不履行に対して罰金を科すことで、間接的に面会交流の実施を促すことができます。ただし、間接強制決定が出ただけで自動的に課金されるわけではなく、実際に金銭を回収するには、別途強制執行手続をとる必要があります。

3 面会交流権侵害を理由とする損害賠償請求

 調停や審判で面会交流を実施することが確定している場合、不法行為に基づく損害賠償請求をすることもできます。ただし、損害額としては、上記2の間接強制の場合と同様に、不履行1回あたり数万円というような額しか認められないことが多く、実効性に欠けると言わざるを得ません。また、勝訴したとしても、実際に損害金を回収するには、別途強制執行手続をとらなければいけないことも、上記2と同様です。

4 親権者変更調停・審判

 以上のように、親権者が裁判所の決定を無視した場合であっても、面会交流を直接的に強制する手段はないため、泣き寝入りさせられている非親権者は多くいるかと思われます。

 そのような時に、子と会うことを実現する可能性が残された手段として、親権者変更調停・審判があります。面会交流に協力しない親が親権者・監護者でなくなった場合には、子を手元に置いておくこと自体が違法になりますので、直接的に子を取り戻すことができる可能性がでてくるのです。

 この点、福岡家裁平成26年12月4日審判は、離婚後の面会交流を認めることを前提に母親が親権者となったのに、母親の言動が原因で子どもが面会に応じていないことを理由として、「母親を親権者とした前提が崩れている。母親の態度の変化を促し、円滑な面会交流の再開にこぎつけることが子の福祉にかなう」と判断し、面会交流の不履行を理由として親権者の変更を認めました。この事例では、監護権が母親に認められているため、子の引渡しまでは認められていませんが、裁判所としても面会交流の意義を重視していることを明らかにした審判といえ、今後は、面会交流拒否事例に対しては親権者変更調停・審判をもって対応することはより有効な手段となってくるかと思われます。

5 終わりに

 子の奪い合いの事案については、当事者間でかなり激しい争いになることが少なくなく、ご本人だけでは如何ともし難いことも多いかと思われますので、是非弁護士へご相談ください。

弁護士 森 惇一