皆さんこんにちは。
1月17日分のブログで、婚姻成立後、夫婦間にはどのような法律関係が生じるかを紹介しました。
具体的には、①夫婦の同氏、②同居義務・協力扶助義務、③貞操義務、④夫婦間の契約取消権でしたね。
(記事はこちら:婚姻により夫婦間に生ずる人的な法律関係について)
今回は④夫婦間の契約取消権についてより深く検討していきたいと思います。
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる(民法752条)。民法は夫婦間に契約の取消権があることを明言しています。
たとえば、夫が妻に結婚記念に高価なダイヤの指輪をプレゼントすると約束し、その約束を書面で交わしたときでも、夫婦間の契約取消権によって、夫は自由にやっぱりやめたといえるということです。
仮に夫婦間の契約取消権がなかった場合はどのような結果になるのでしょうか。夫と妻がした約束は、民法の贈与という契約の一種にあたります。民法550条は書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができると規定しています。贈与という一方当事者だけが負担を負う契約は慎重であるべきで、基本的には贈与は撤回できるとしつつ、書面まで作り慎重な手続を踏んだような贈与は撤回できないようにしたのがこの規定の趣旨です。
本件では夫と妻の間の贈与は書面を作ってまでしたのだから、民法550条によっては契約を撤回できないというのが、夫婦間の契約取消権がない場合の結論です。
それでは、民法はなぜ夫婦間の契約の取消権を認めたのでしょうか。この規定の趣旨は、①夫婦は愛情をもって成り立っており、愛に溺れて無謀な契約をなすおそれがあること、②夫の権力により服従させたりすることがあるから、十分な自由をもって契約を締結できないおそれがあること、③法的な強制を伴う可能性のある契約を婚姻関係に持ち込むのは好ましくない、という3つの理由があげられています。
ただ、どの趣旨も現代においてはあまり説得的とはいえないように感じます。判例も夫婦間の契約取消権が濫用されるケースがあり、制限的な解釈をしています。例えば、夫婦関係が破綻した後に締結された契約の取消権の行使を制限したり、夫婦関係が良好であったころに締結された契約でも、関係が悪化した後は取り消すことができないと判断しています。
このように夫婦間の契約取消権は制限的に解釈されていますので、夫婦の間でも無謀な約束はせず、約束をしたらその約束は守るということは大事にしないといけませんね(笑)
それでは、また。
参考文献(「民法親族・相続」(第2版)松川正毅)
弁護士 福永聡