こんにちは、弁護士の平久です。
 前回に引き続き、婚姻関係の「破綻」を認定する際の考慮要素となる事情を検討していきたいと思います。
 (前回の記事はこちら:離婚事由(5号)について

1 被告の離婚意思を推測させる言動

 被告が離婚に同意しないから訴訟になるのですが、被告の言動から実際には婚姻継続の意思が認められず、夫婦共同生活の回復の見込みがないと推測されることがあります。

 例えば、夫が妻を刑事告訴した事案があります。この事案では、妻が無断で離婚届を提出してしまったのですが、夫は妻を有印私文書偽造・同行使罪等で告訴しました。これに対して、妻は夫に対して離婚請求訴訟を提起しました。

 裁判所は、

「原告を刑事告訴するということは、被告としては、原告を配偶者として認めないことを宣言したも同然のことである。配偶者を刑事告訴する以上は、配偶者を離婚したうえで行うのが常識であって、配偶者を刑事告訴しながら他方で婚姻関係を維持するなどということは常軌を逸した行為というほかなく、理由の如何を問わず、婚姻を継続しがたい重大な事由があるものとして、告訴された配偶者からの離婚の請求については、特別の事情がないかぎり、有責の有無に関係なく離婚を認めるのが相当である。」

と判示し、離婚を認めました(東京地裁判決平成4年6月26日家月46巻1号142頁)。

2 訴訟上の注意点

 刑事告訴のような深刻な手段でなくても、離婚訴訟において激しい非難の応酬になっているような場合にも、そのこと自体が被告の原告に対する愛情の喪失を物語るものとして破綻を認定させる一事情となることも考えられます。

 裁判官としては、そのような夫婦の非難のやり取りを見て、この夫婦関係はもう修復できないところまで至っていると考えてしまうからです。このことから、離婚訴訟で被告となった場合には、必要以上に攻撃的になって原告を非難してしまうと、かえって離婚が認容されてしまい、原告の思うつぼになりかねませんので注意しましょう。

 実際に、被告が到底婚姻継続を希望しているとは思われない事案で、被告側が、被告には婚姻継続の意思があり、原告に一日も早く被告の元に戻ってきて欲しいと言った主張をすることがあります。

 被告としては、婚姻継続の意思があるというために、こうした主張をするわけですが、原告との接触が全くなかったり、夫婦関係修復のための具体的な方策を提示しなかったりすると、その主張は内実を伴わない空疎なものとして裁判官に信用されず、かえって有利な離婚条件を勝ち取るための打算的なものとされてしまうかもしれませんのでご注意下さい。

弁護士 平久真