前回は、弁護士への依頼について触れ、最後は早期に弁護士へ依頼を行った場合でも、交渉の成功確率を上げる対策は必要と思われるということで締めました。
 (前回の記事はこちら:別居から離婚3

 今回は、その対策について少し触れようと思います。

 弁護士が交渉をスムーズに成功へと導くために必要なのは、とにもかくにも当該離婚事案に対する正確な理解であると思われます。

 弁護士が当該事案に対する理解を欠いたまま事案処理に着手し、結果かえって対立を激化させてしまっては元も子もありませんから、依頼の段階でしっかりと伝えるべきことを伝えるべきと思われます。そして、当事者本人の希望と、弁護士の知識経験を結び付けることができれば、交渉が大きなトラブルなく成功する可能性は高まるのではないでしょうか。

 それでは、弁護士にはどのようなことを伝えればよいのでしょうか。

 まずは、離婚に至った経緯を含めた現在までの状況です。特に、弁護士は、最終的に離婚訴訟にまで至った時に離婚を勝ち取ることができるか、離婚に際して他に要求を立てる場合にそれが認められる見込みがあるかを気にしますから、夫婦間にどのようなことがあって離婚を決心することとなったのかには興味を持ちます。

 経緯を伝える際には、①どのようなことがあったのかという事実そのもの、②その事実を証明する証拠の有無や内容、この2点が最も重要だと思われます。弁護士は、これら2点を基に、争いとなった場合の離婚の可否や、併せてどの程度までの要求なら認めさせることができるかなど、事案解決までの大まかな道筋に当たりをつけます。

 そして、③相手がどの程度こちらの要求に反発しているか、または反発すると見込まれるか、を伝えることも大事です。話し合って合意を得られる可能性がないのに交渉を行っても時間と費用の無駄ですから、弁護士が事案解決をどのような枠組みで進めるかを適切に判断するために伝えておく必要があります。

 次に弁護士へ伝えておくべきことは、離婚条件の内容と、各要求間の優先順位です。

 弁護士は、原則依頼者のために働く立場にありますから、条件のみ伝えておいただけでは、強硬に相手へ何もかも要求してしまい、結果余計な反発を買って事案がこじれることとなりかねません。

 離婚に際して譲れない条件、譲歩の余地のある条件、譲歩できるライン、そもそも求めない条件など、しっかりと弁護士との間で話を詰めておいた方がいいです。ここで、時間があるときにしっかりと要求を整理したことが生きてきます。交渉においては現場で臨機応変な対応が求められる場面が多いですから、どこなら押してどこでは引くことができるということを弁護士が把握しておけば、後手に回り不利を強いられることは少なくなります。

 もっとも、ある条件を本人が希望しても、当該事案においては認められる見通しが低くなる場合もありますから、そのあたりは弁護士の話をよく聞いておいた方が無難です。

 最後は、おまけのようなものですが、相手の性格等についても弁護士へ伝えておいた方がよいかもしれません。

 交渉は結局人と人との駆け引きですから、一気呵成に畳み込んだ方が要求を通しやすいタイプ、じっくりと腰を据えて話さないと話を聞いてくれないタイプなどで、接し方も変える必要があります。

 先の諸点に比べると影響は大きくないですが、少しでも交渉をよい結果で終わらせるためには伝えておいて損はないと思われます。

 さて、弁護士に伝えるべきことを伝えて依頼を済ませれば、次は計画を立てて別居を実行する段階です。次回は、別居実行時のことに触れようと思います。