1 慰謝料の消滅時効

 慰謝料請求をする権利は「損害及び加害者を知った時」から3年経つと消滅時効という制度により消えてしまいます
 では、不貞行為が発覚しても子育てを優先させるために離婚を先延ばしにした場合には、慰謝料が消滅時効により請求できなくなるのでしょうか。

2 裁判例の傾向

 判例では不貞行為の継続そのものによって被る精神的損害に関しては、不貞の事実を知った時から3年経つと消滅時効によって慰謝料請求権が消えると判断されています。
 他方で、不貞行為により離婚に至ったことによって被る精神的損害に関しては、離婚が確定した時点から3年経つまでは消滅時効により慰謝料請求権が消えることはないと判断した裁判例も存在します。

 このように裁判例を検討すると、「不貞行為自体の慰謝料」は不貞を知ってから3年「不貞を原因とした離婚による慰謝料」は離婚確定時から3年経つと時効によって消滅すると考えることが出来ます。

3 不貞行為が発覚したが離婚を先延ばしにした場合

 上記の裁判例の傾向からすると、不貞行為によって離婚に至ったと評価される場合には、離婚まで期間が経っていても離婚から3年間は慰謝料が請求できる可能性があります。