前回は、財産分与を受けた場合に課税されるかどうかについて紹介しました。今回は、財産分与で取得した不動産を売却した場合に課税されるかどうかについて紹介します。

 1月31日の記事で、財産分与で不動産を譲渡した場合に、その不動産が取得時よりも値上がりしているときは譲渡所得税が課されることを紹介しました。
 (記事はこちら:財産分与したら課税される?

 財産分与で不動産を取得して、その後その不動産を売却した場合にも譲渡所得税が課される可能性があります。

 譲渡所得税は、譲渡所得について課されるものですが、譲渡所得は、簡単にいうと、不動産の売却代金から不動産を取得したときの代金を差し引いて算出します。つまり、不動産の売却代金が1億円で不動産を取得したときの代金が8000万円だとすると、1億円-8000万円で2000万円の譲渡所得があるということになります。

 反対に、不動産の売却代金が8000万円で不動産を取得したときの代金が1億円だとすると、差額は-2000万円となりますので、譲渡所得は0円ということになります。

 では、財産分与の場合、不動産を取得したときの代金をどのように算定するのでしょうか?財産分与の場合、代金を支払わずに不動産を取得しているため、もし、取得代金が0円とされてしまうと、売却代金が1億円のときは、譲渡所得は1億円ということになってしまいそうです。しかし、所得税法基本通達38条6項では、以下のように定めています。

「民法第768条《財産分与》の規定による財産の分与により取得した財産は、その取得した者がその分与を受けた時においてその時の価額により取得したこととなる」
(所得税法基本通達38条6項)

 つまり、取得代金は財産分与時の時価になりますよってことです。そうすると、財産分与で取得した不動産を売却する際には、財産分与時の不動産の時価がいくらだったかを把握しておかないと譲渡所得税が課されてしまうかもしれないですね。

弁護士 竹若暢彦