前回と前々回の記事では、財産分与をした側に税金が課されるかについて話をしました。
 今回は、財産分与を受けた側に税金が課されるかについてお話したいと思います。

 財産分与を受けるということは、相手から財産を贈与される形に似ていますので、贈与税が課されないのか疑問に思います。しかし、この場合、原則として贈与税は課されません。

 理由は、財産分与は、相手から贈与を受けるものではなく、財産分与請求権(民法第768条1項)という権利に基づいて給付を受けたものと考えるからです。確かに、財産分与は、婚姻中の夫婦共同財産の清算という要素がありますので、もともと自分が所有していた財産をもらって、贈与税が課されるのはおかしな話ですね。

 そうすると、自分が所有していた財産以上の財産の分与を受けた場合には、贈与税が課されるのでしょうか?相続税法基本通達には以下のように規定されています。

 「その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分」「は、贈与によって取得した財産となる」(相基通9-8但書)

と規定しています。やっぱり、財産分与でも必要以上にもらい過ぎると贈与税の課税対象となってしまうみたいです。

 また、相基通9-8但書には、次のような場合にも贈与税の課税対象になることが規定されています。

 「離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となる」

 これは、もともと離婚するつもりがないのに、課税されない財産分与を隠れ蓑にして夫婦間で財産を贈与するような場合に、贈与税を課すということを規定しているわけです。

 本当に離婚する場合には、後者の場合に該当することはまずありませんが、前者の場合に該当することはあり得ることかもしれません。しかし、いろいろな文献を調べても国税庁のホームページを調べても、どのような場合に「過当であると認められる」のかについてはっきりと明示されていません。

 なので、離婚するとはいえ、財産分与で欲張り過ぎるのはよくないかもしれません…

弁護士 竹若暢彦