Q4:私は、入籍していないのですが内縁関係でも年金分割をしてもらえるのでしょうか?また、内縁の夫に入籍した妻がいる場合、私は分割してもらえないのでしょうか?
A:内縁関係でも分割は可能です。内縁の夫に入籍した妻がいる場合でも分割可能な場合があります。
夫婦の関係は、婚姻届の有無で法律婚と事実婚に分けられます。婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情(事実婚関係)にあった者の一方が被用者年金に加入し、他方がその被扶養配偶者として国民年金法7条1項3号に定める第3号被保険者と認定された期間は、年金分割の対象となります。
ただ、事実婚の場合、婚姻届出をしていないだけでいつでも入籍可能な実質的な婚姻関係にある事実婚と、戸籍上法律婚の配偶者がいて婚姻届出ができない事実婚(重複的内縁関係)では違いがあります。
前者では、事実婚を証明すれば年金の分割が受けられますが、後者の重複的内縁関係の場合には、法律婚の妻と事実婚の妻との優先関係が問題となります。
夫が妻Aと婚姻中、他の女性Bと事実婚状態にあり、夫の保険料納付記録をAとBが取り合う場合、事実婚の第3号被保険者期間>法律婚>事実婚(第3号以外)という順で優劣が決まります。事実婚の第3号被保険者期間と認定されるためには、社会通念上夫婦の共同生活と認められる事実関係があると認められることが必要ですが、そのように認定された場合には、法律婚に優先させることにしたわけです。
例えば、夫と妻Aとの婚姻期間30年のうち、11年目以降夫とBが事実婚関係にある場合、事実婚第3号期間と認定された期間についてはBがAに優先して年金分割を受けられます。
既に述べたように、分割対象期間は、事実婚の場合、妻が第3号被保険者(扶養に入っている)であった期間のみとなります。法律婚では、婚姻の開始時期から離婚時期までは明確ですが、事実婚では開始時期や解消された時期を特定することが困難なことから事実婚の婚姻期間は合意分割の対象とはされません。
しかし、事実婚関係にある一方が被扶養配偶者として第3号被保険者と認定された期間があるときには、その期間の始期と終期は明らかですから、特定に問題は生じません。そこで、事実婚期間のうち、一方が被扶養配偶者として第3号被保険者であった期間が分割対象期間とされました。
弁護士 石黒麻利子