1 費用は各自が原則として負担

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 この点、最高裁判所平成24年12月9日決定は、「面会交流は子の福祉のために実施するものであって、面会交流にかかる費用については面会交流実現のためにそれぞれの親が支出したものについては、支出した者が負担すべき筋合いのものといえる。」としています。
 この判決によれば、面会交流のために出捐した費用については自己負担となります。

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 そうすると、面会交流のために遠方へ移動する者にとっては、相手方よりも費用の額が大きくなる場合があります。
 この点について同判決は、非監護親と未成年者との面会交流は、親と子の双方にとって親子間の自然な情愛に基づくものであり、未成年者の安定的で健全、幸福な成長を促すために実現されるものであるから、面会交流に係る費用は各自の負担とするのが公平であるとしています。
 したがって、旅費を一方当事者が多く負担しているとしても、それは面会交流の性質上やむを得ないものとなりえます。

 もっとも、収入が乏しく、もっぱら費用面の問題で現実的に面会交流をすることができない場合まで、費用を各自の負担とすることが「子の福祉のため」といえるかは個別具体的に判断する必要があると考えられます。

2 相手方が(一方の同意なく)子供を連れて行った事情は考慮されるか

 面会交流を要求する側からすれば、同意なく相手方が子供を連れて行ったため、やむを得ず面会交流という形をとらざるを得ない場合もあります。
 この点について、同判決は、子供を連れて別居をする経緯などの事情を加味して、子供の一方的な連れ去りと評価できない場合には、費用の各自負担の原則の考えを維持する方向にあると考えられます。
 したがって、夫婦の一方が子供を連れて別居する際に、どのような経緯で別居したかによって判断が変わりうる点であると考えられます。

3 まとめ

 面会交流の費用負担については、原則として各自負担となりますが、現実の収入状況や子供を連れて別居する経緯(一方的な連れ去りと評価できるか)などの個別の事情によって、費用負担の有無や割合は変化しうる点であると考えられます。したがって、費用面等も含め面会交流でもめた場合には弁護士にご相談してみるといいと思います。