こんにちは。長谷川です。  前回に引き続き、面接交渉の問題点について説明しますね。
 (前回の記事はこちら:面接交渉の問題点(その2)

 さて、今回は、現状の枠内で面接交渉の実効性を担保する為には、どのような方法が考えられるか、です。

 前提として、面接交渉が画餅に帰す理由のメインは、①制裁がないこと、②頻度が少ないことだと思っていますので、その前提でお話します。

 まず①については、調停・和解に際して、履行を担保させるような方向で調停条項を入れることを考えましょう。たとえば、「一方的に面接交渉を2回以上続けて行わない場合には、翌月より養育費の支払を止める」といった内容の条項が考えられます。

 これって、一般の方々の感覚では「フェア」と感じられるようで、こういう条項を入れたいというご要望はよくあります。

 他方、裁判所では、こういう条項を入れて欲しいと言っても、「面接交渉と養育費は別の問題だから」といって記載を嫌がることが普通です。

 私は、お客様に対しては、裁判所のこういった対応を予め説明しますが、裁判所及び相手方に対し「この条項を記載して欲しい」という交渉はします。大抵は潰されてしまいますが、それでも、これまで数度、こういった条項を入れて貰えた経験があります。

 従って、面接交渉の実効性を高める為には、諦めずに交渉してみるべきだと思います。

 また、文言についても、間接強制等ができるように、しっかり検討して下さい。
 ・・・って具体的に書こうと思ったら、既に、その辺りのことは、別の弁護士が書いていますので、そちらを参照して下さい(割愛)。

 次に②についてですが、現在の月1回という相場は少なすぎると思います。頻度が少ないから、自然消滅的に会わなくなってしまい、面接交渉が形骸化するという傾向があると思うのです。

 大体、子どもに月に1回しか会えないって、あまりにも、寂しくありませんか?

 これについて裁判所からよく言われるのは、「そうは言っても、親権者側の生活もあるし子どもにも子どもの生活があるから、週に1回というような頻度では、親権者と子どもの負担になりすぎる」という理屈です。

 でも、例えばアメリカでは、「週の3日を非親権者と、週の4日を親権者と」といったように、一緒に生活をさせるような面接交渉の類型も少なくありません。つまり子どもは、被親権者の元から通学したりしているわけです(もはや日本的な「面接交渉」といった内容を超えている感じもしますが)。

 アメリカの親子と日本の親子差違があるわけではありませんから、「子どもや親権者の負担」というのは言い訳に過ぎず、この点については、裁判所や当事者の考え方・工夫・意識の変更でクリアできる問題だろうと思います。

 なお、私が勝ち取られてしまった事例なので、偉そうには書けませんが、東京家裁の審判事件で「面接交渉週に1回(土曜日の午後4時間程度)、うち月に1回は宿泊」という、非常に高頻度の条件でまとまった事案があります。

 このときの相手方の代理人の戦い方は、非常に粘り強く、また一生懸命で、結果も素晴らしかったものですから、相手方とはいえ、その対応を見て、私自身、「敗北主義はダメだ。もっともっと粘り強く戦わなければいけないなあ」と感じたものでした。

 特に東京家裁は、他の家裁よりも面接交渉の重要性について理解が深く、面接交渉を大切に扱っているという印象があります(あくまで印象ですが)。

 従って、面接交渉を形骸化させない為に、なるべく多くの回数の面接交渉を獲得すべく、必死に戦ってみる意味はあると思います。(非親権者と子どもとの従前の関わり方が密であり子どもの精神的な安定につながっていたことや、子どもとの面接交渉が月に1回では到底、従前のような精神的安定を育むことはできないというところを、様々な角度から主張/立証していくわけです。)

 更に、面接交渉の方法についても、柔軟に考えるようにしてみて下さい。

 「会うのは月に1回」でも、電話やメールのやりとり等、お子さんとのふれあい方は色々ありますよね。電話やメールは「自由に」とか「週に2~3回」という条件は、裁判所でも比較的獲得しやすい条件だと思いますので、是非、頑張って交渉してみて下さい。

 電話やメールで、頻繁にやりとりしていれば、「今度会ったら、●●をしようね」「今度会った時は、●●でご飯を食べようね」等と計画できますので、たとえ月に1回会うだけだと言っても、その機会を有効かつ意味のあるものにできます。1回の面接交渉の内容が豊かになって、形骸化せずに済むわけです。

 また、「子どもが現実に楽しみにしている」となると、親権者も(たとえ自分は元配偶者を憎んでいたとしても)、子どもが望んでいることを積極的に阻害することは躊躇しますので、理由をつけて面接交渉をしないといった事態に陥るリスクが低減します。

 配偶者と別れても、子どもとは親子です。子どもは、両親や周囲の人にたくさん愛されることが一番大切で、たくさんの人に愛されることがその子どもの未来や生活を守ることにつながります。その意味で、日本の面接交渉は、子どもの福祉の充実にとっては、まだまだ不十分だと思います。

 そもそも親権争いが激しくなりやすいのだって、日本の面接交渉が画餅でしかないからだという面は否めないと思うのです。

 夫婦間のいざこざや離婚は、所詮大人の問題ですから、いくらでも気の済むまでやれば良いと思いますし、私ども弁護士も、ご依頼下さった当事者の方の為に、徹底的に戦おうと思っています。

 ただ、親子の問題については、親同士の問題とは別にして、子どものことを第一に考えて欲しいと思っています。

 ・・・なんかこの3回は、柄にもなく、すっごく真面目な話をしてしまいました。疲れてしまったので、次回からはいつもどおり、軽~くお話しようと思います。

弁護士 長谷川桃