Q2:離婚時年金分割制度は、女性に有利というイメージがありますが、本当に、女性にとって有利な仕組みなのでしょうか?期待はずれという話も聞きますが、実際はどうなのですか?

A:必ずしも、女性に有利とはいえません。

 年金制度は、国民年金(基礎年金)を基礎とした3階建て(1階部分:国民年金、2階部分:厚生年金、共済年金等、3階部分:厚生年金基金、確定給付企業年金等)となっています。

 離婚時年金分割制度ができる以前は、専業主婦であった妻が受給できる年金は、一階部分の国民年金だけでした。調停や訴訟で離婚する場合、夫の受給する年金の一部を妻に払うという取り決めがなされることがありましたが、これは、夫が支給された年金の一部を妻に払うことで初めて実現するもので大変不安定でした。

 しかし、年金分割制度により、妻は、夫が受給する2階部分の厚生年金等の一部を上乗せされた年金額が受給できることになりました。この意味では、女性に有利といえます。

 しかし、必ずしも有利とばかりはいえません。

 まず、離婚時年金分割制度で分割対象となるのは、上述のとおり2階部分の厚生年金、共済年金なので、夫が会社員や公務員などであればメリットはありますが、夫が2階部分を持たない自営業者の場合、分割される年金はありませんので、自営業者の妻にはメリットがないことになります。

 かえって、妻が会社員や公務員で、夫が自営業者であれば、妻の2階部分を夫に分け与えることもあり得ますから、必ずしも女性に有利な仕組みとはいえない訳です。

 次に、3号分割では、特定被保険者の標準報酬総額の2分の1が分割されますが、合意分割では、対象期間における夫と妻の標準報酬総額の2分の1を上限とし、標準報酬総額から算出された下限の範囲内で定められた割合で分割されるので2分の1以下になる場合もあります。ですから、合意分割の場合には、期待していたほどの恩恵がないこともあり得ます。

 したがって、離婚時年金分割制度は、一部の女性に有利な点があるものの、期待していたほどの恩恵がうけられない場合もあるのです。

弁護士 石黒麻利子