法律相談をしていると、不貞などの証拠を掴むために、夫の会話を録音すると犯罪になるのではないかと心配されている方が多くいらっしゃるように感じられます。今回は、この点について説明していきたいと思います。

 相手が事実を認めてくれていたり、争わないでくれたりしたら、何も問題はありません。しかし、離婚でも裁判で争うとなると、裁判所は証拠がすべてですから、証拠がないと勝つことは難しくなります。

 ただ、証拠といっても、なかなか簡単に手に入るものではありません。相手との会話を録音しておき、それを証拠にするのが一番簡単かもしれません。

 では、この録音は盗聴なのでしょうか。答えは、NOです。盗聴とは、話や通信などを、当人らに知られないように密かに聴取・録音することです。第三者間の会話を盗み聞きしたり、録音したりすると盗聴です。なお、盗聴がすべて刑事処分を受けるわけではありません。

 会話当事者の一方が、相手方の同意を得ずに、会話を録音することは、秘密録音などと言われています。この秘密録音については、最高裁判所が、平成12年7月12日に、「一方の当事者が相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではな」いとしていますので、違法ではありません。

 ただし、注意していただきたいのは、録音すること自体は違法ではないとしていますが、その録音したものの扱いをどのようにしても良いと言っているわけではない点です。

 千葉地裁平成3年3月29日判決は、

「対話者の一方当事者が相手方の知らないうちに会話を録音しても、対話者との関係では会話の内容を相手方の支配に委ねて秘密性ないしプライバシーを放棄しており、また、他人と会話する以上相手方に対する信頼の誤算による危険は話者が負担すべきであるから、右のような秘密録音は違法ではなく、相手方に対する信義とモラルの問題に過ぎない」

としています。注目していただきたいのは、「対話者との関係では会話の内容を相手方の支配に委ねて秘密性ないしプライバシーを放棄しており」という点です。「対話者との関係では」とありますので、この点から考えると、話の内容などから対話者以外に知られたくないという内容の場合などに、これを他人に公開したり、一般多数が視聴できるような状態にしたりすることは、大変問題があると思われます。

 さて、当事者間で、離婚の裁判に使うことは問題がないかですが、これについては、一般に事件の中で行われていることもあり、特に問題ないと思われます。

 なお、証拠を作るために録音をするときは、いつ、どこで、誰と会話をした内容であるかを分かるようにしておきましょう。デジタルであれば記録にそれらが分かるようにしたり、録音の初めにご自身の声でそれらを吹き込んでおいたりするのが良いでしょう。途中で止めて、又録音したりすると、改ざんを疑われかねませんので、疑義の生じないように作っておきましょう。

 また、証拠として、意味があるものなのか、意味がないものなのか、法律的に専門的に見てみないと分からないことがありますので、弁護士などに相談してみると良いと思われます。

弁護士 松木隆佳