この頃は、債権回収に関するご相談が多い傾向にあります。
そこで、債権を強制的に回収する手段について、これからご説明していきたいと思います。
A会社がB会社に対して、100万円の売掛金債権を請求し、当該請求を認める判決が確定したとします(事例①)。
しかし、当該判決がなされても、B会社がA会社に対し任意に支払ってくれなければ、A会社はB会社に対する当該100万円の売掛金債権を回収することはできません。
また、A会社がB会社に対して売った商品について、その所有権を留保しており、かつ、当該所有権に基づく当該商品の引渡請求をし、当該請求を認める判決が確定したとします(事例②)。
しかし、この場合でも、当該判決がなされただけでは、B会社がA会社に対し任意にその商品を引き渡さなければ、A会社はB会社から当該商品を回収することはできません。
そこで、このような判決が出ても、任意に支払わない相手方に対し、強制的にその判決内容を実行する手続が必要となり、その手続が強制執行の手続となります。
テレビや新聞で強制執行という言葉等を聞いたことはあるという人は多いと思いますが、実際にどういった手続なのかということについては、知らないという人が多いと思います。そこで、これから、この債権回収についてご説明していきたいと思います。
まず、強制執行にはいくつかの種類があります。その種類を分類していくと、まず、大きく分けて、(1)金銭の支払いを目的とする債権についての強制執行と、(2)金銭の支払いを目的としない債権についての強制執行があります。
前述した事例①のA会社のB会社に対する売掛金債権の請求が(1)に該当することになり、事例②のA会社のB会社に対する商品の引渡請求が(2)に該当することになります。
そしてこれらの強制執行の目的となる財産は、不動産、動産、及び債権等がありますが、その具体的な実施方法は以下のようになります。
まず、不動産については、裁判所に対して強制競売の申立をします。当該申立を受けた裁判所は、費用を予納させて、その他必要な要件を審査し、競売を開始する決定をします。
その後、裁判所の定めた鑑定人がその不動産を評価します。裁判所はその評価を基礎にして競売価格を決定し、公告した上、一定の日を決めて、その日に不動産を当該競売価格以上で売り出すことになります。そして、期間入札が行われることになります。
動産については、差し押さえる動産の所在地の執行官に対して行います。これにより、執行官はその所在地に行き、その裁量でその債権額を充足するまで動産を差し押さえていくことになります。
執行官が差押えをした場合、その差し押さえたということを表示するために、札をはったり、その他の方法で差押えの表示をします。
このように差押えた動産については、売却期日を指定して、競りで売却し、その売却代金を債権者に配当していくことになります。
債権の執行については、債務者の住所地の裁判所に対して、債権の差押命令の申立をします。これにより、裁判所は必要な要件を充足しているか審査した上で、差押え命令を出すことになります。
債権の取り立て方法については、差押えが効力を生じて1週間経つと、債権者は差し押さえられた債権の取り立てを直接することができるようになりますので、第三債務者へ直接取り立てに行って、第三債務者に支払ってもらうことになります。