預金債権を差し押さえるための情報は?

 債務者が取引先銀行に対して有している預金債権を差し押さえるには、どのような情報をつかんでおけばよいのでしょうか。

 預金債権を差し押さえるときの「差押債権目録」のひな型を見てみましょう。

差押債権目録

金5,000,000円

 債務者が、第三債務者である株式会社×××銀行×××支店に対して有する下記預金債権のうち、下記に記載する順序に従い、頭書金額に満まで。

1 差押のない預金と差押のある預金があるときは、次の順序による。
 (1)先行の差押、仮差押のないもの
 (2)先行の差押、仮差押のあるもの

2 円貨建預金と外貨建預金があるときは、次の順序による。
 (1)円貨建預金
 (2)外貨建預金
(差押命令が第三債務者に送達された時点における第三債務者の電信買相場により換算した金額(外貨)。但し、先物為替予約があるときは、原則として予約された相場により換算する)

3 数種の預金があるときは、次の順序による。
 (1)定期預金
 (2)定期積金
 (3)通知預金
 (4)貯蓄預金
 (5)納税準備預金
 (6)普通預金
 (7)別段預金
 (8)当座預金

4 同種の預金が複数あるときは、口座番号の若い順序による。
 なお、口座番号が同一の預金が複数あるときは、預金に付せられた番号の若い順序による。

 この差押債権目録を見て明らかなことは、債務者の取引先銀行と支店がわかっていれば足ります。
 口座番号、預金の種類、預金の金額も知る必要がありません。
 したがって、債権差押えの手段としては、比較的少ない情報で利用できます。

預金債権差押えの限界

 預金債権の差押えは比較的利用しやすい制度ですが、つぎのような限界があります。

 第1に、債務者が事業主の場合、通常、銀行はその債務者に対して貸付金を有していることが多いです。したがって、預金の差押えがなされると、銀行が相殺の意思表示をしてくることがよくあります。例えば、差押えをしたところ、預金が500万円あった、ところが銀行はその債務者に500万円を貸し付けており、相殺の意思表示をして500万円の預金を消してしまうのです。預金がなくなる前に、銀行は自己の債権回収を図るわけです。

 第2に、預金債権の差押えは、比較的利用しやすい差押えなので、複数の債権者からの差押えが競合する場合がよく起こります。要するに、御社が債務者の預金に気づいたときには、他の債権者も気づいている場合が多いということです。このような場合には、競合した債権者同士でその債権額の割合に応じて比例按分して配当を受けることになります。