今回は債権に対する強制執行について、ご説明したいと思います。
 強制執行というと、まずは債務者の土地や建物等の不動産や、商品等の動産をイメージすると思いますが、重要な強制執行の対象として忘れてはならないのが債権です。

 債務者が会社員であれば会社から給料をもらっているでしょうし、債務者が会社であれば、銀行に多額の預金があるかもしれませんし、顧客に対して多額の売掛債権を有している場合もあると思います。

 このように債務者が第三債務者に対して有している債権を差し押さえて、自ら取り立て等して満足を得る手続が債権の差押えであり、債権に対する強制執行です。

 なお、この第三債務者についてですが、債務者が会社員である場合、債務者は会社に対して給料債権を有していますので、当該会社が第三債務者ということになります。また、債務者が会社であって銀行に預金がある場合、会社は銀行に対して預金に関する債権を有していますので、当該銀行が第三債務者ということになります。

 債権差押えは、不動産や動産のように売却して金銭に換価する手続がないだけ、その手続上、不動産や動産に対する強制執行よりも容易に債権回収が可能な面があります。

 債務者の有している債権が上場企業に対する債権であったり、銀行預金であったりすれば、そのような企業や銀行は法律上正当に主張できる権利がない限り、債権の差押えに粛々と従い、差押えを行った債権者に対して支払う可能性が高いと思います。

 ただし、債権者が、債務者の第三債務者に対して有する債権を差し押さえることができるといっても、全ての債権を差し押さえることができるというわけではありません。

 債務者の基本的生活に関する部分については、強制執行が全面的又は一部制限される場合があるので、注意が必要です。

 具体的には、給料等については、原則として、各支払期に受けるべき額の4分の3に相当する部分は差し押さえることができないとされ、残りの4分の1だけが差押えを許されるとされています。

 債権差し押さえの効果としては、債権を差し押さえることにより、債権を消滅させる行為を禁止するという効果が発生します。債権は不動産や動産のように物体として存在するものではなく、第三債務者から債務者に対して支払いがなされれば、その債権は消滅してしまいます。

 そこで、債権を差し押さえることで、債務者は第三債務者からその債務の弁済を受けることを禁止され、第三債務者においても債務者に対して支払うことが禁止されます。