イ 加害者が賠償責任保険に加入していた場合には、保険金が支払われる余地がありますが、ここで問題となるのが、この保険金が加害者の財産として処理される点です。
通常の交通事故で被害者から保険会社へ保険金の請求が請求できるのは、加害者が加入している任意保険の約款上に被害者の直接請求権が認められていたりするからです。契約上は被保険者が保険金を請求することになっており、破産手続では、破産者の名義の財産は破産財団として裁判所から選任された破産管財人の管理下におかれます。すると、破産財団とされた財産は原則的に換価されて、各債権者への配当金に充てられていくことになるので、交通事故の被害者は破産手続において優先的に保険金の支払いを受けられない可能性があるのです。もっとも、保険法22条により破産者を被保険者とする責任保険契約による保険給付請求権には先取特権が認められているので、回収ができないという事態は避けられるでしょう。