運行供用者責任について(3)及び(4)では、裁判例における運行供用者の該当性判断の枠組みについてご説明しました。
では、運行供用者責任について(4)で紹介した現在の下級裁判所の大勢である法的地位説の立場から具体的な事案を見ていきたいと思います。
まず、法的地位説は所有者や賃借権を有する者は、具体的運行時においても運行支配を有するものと推定されます。
したがって、自動車の所有権を有しているレンタカー業者などは、貸し出した自動車を運転した客が事故を起こした場合に、原則として運行供用者となります。
法的地位説は、運行支配を有すると推定される被告の側で運行支配を喪失させる事実を主張立証しなければ、運行供用者責任を免れないという考え方をとります(抗弁説)ので、上記のような場合のレンタカー業者は、自らが運行支配を喪失させる事実を主張立証する必要があります。
例えば、客が事故を起こした時期が契約において定めた返還期間を著しく過ぎていることや無断で第三者に自動車を貸したことなどが運行支配を喪失させる事実に当たります。
レンタカー業者に運行支配が認められる実質的な理由は、レンタカー業者が客との賃貸契約を通じて、客の自動車の運行から経済的利益を得たり、契約に従い自動車の返還を受けている点にあるので、上記のように、返還時期を著しく途過した場合や、無断転貸の場合はレンタカー業者の運行支配は失われたといえるのです。