こんにちは。前々回の運行供用者責任について(3)では、交通事故の被害者が運行供用者責任を追及する損害賠償請求訴訟において被告が争った場合、被害者である原告が事故の原因となった運行について存在した各種の事実を立証して、被告が運行供用者に当たることを主張・立証しなければならないという考え方(請求原因説・最判昭和39年2月11日・民集18巻2号315頁)があること、この考え方には批判があり、現在の裁判実務では違う考え方の下で運行供用者該当性が判断されていることをご紹介しました。
(前回の記事はこちら:運行供用者責任について(3))
今回は、請求原因事実説とは異なる現在の裁判実務の考え方をご紹介します。
現在の下級裁判所の大勢は、運行供用者概念を法的地位として把握し(法的地位説)、事故原因である具体的運行前に、運行供用者は抽象的に決まっており(抽象説)、当該車両の所有権や賃借権を有する者は、具体的運行時においても運行支配を有するものと推定され、被告の側で、運行支配を喪失させる事実を主張立証しない限り、運行供用者責任を免れない(抗弁説)という考え方を採用しているといわれます。
もっとも、上記の考え方は、結論の妥当性はあるものの、自賠法3条の文言との整合性等に対し批判があり、運行供用者を事実概念としてとらえたうえで、原告側が、相手方が自動車の所有者である事実(間接事実)を主張立証すれば、被告が運行供用者であることが事実上推定され、被告において、この推定を覆すような特段の事情を主張立証しなければならないとする考え方(間接反証)をとる判例もあります。