1 主婦の休業損害

 主婦は、労働の対価として賃金が支払われるわけではありませんが、判例は、古くから女性労働者の平均賃金をベースとして休業損害の請求を認めてきました(最高裁昭和50年7月8日判決等参照)。
 兼業主婦の場合、現実の収入額と女性労働者の平均賃金のいずれか高い方が基礎とされており(東京地裁平成10年12月9日等)、パートをしている主婦の多くの方は女性労働者の平均賃金(平成24年度で354万7200円)を採用することになります。
 以上により、主婦の1日当たりの休業損害の額は、女性労働者の平均賃金を365日で割ることによって定めることができます。

2 休業期間

 サラリーマンであれば、休業損害証明書等で実際に仕事を休んだ日数を休業期間とすることが通常ですが、主婦の場合、証明書等が発行されるわけではないので休業した期間を定めることが難しいという問題があります。

 この点については、明確な決まりはなく、症状や治療経過等によって判断するほかないため、休業期間は賠償額の交渉の際にしばしば争いになります。

 では、休業期間はどのように考えればよいのでしょうか。
 ここで、症状が重く、家事に支障がある場合、理論的には、事故日からいわゆる症状固定日までの間に全く主婦業ができなかったとして休業損害を請求することが考えられます。  具体的な計算方法としては、事故発生から症状固定日までの全期間に、休業損害の日額をかけることになります。

 しかし、症状が軽微であった場合、このように単純にはいきません。
 なぜなら、症状が軽微である場合、治療が終了するまでに症状が徐々に改善し、治療が終了する頃には、事故前とあまり変わらない程度に家事を行えるようになっていることも少なくないからです。

 このような場合の裁判所の休業損害の認定の仕方は一律に決まっているわけではありません。裁判例としては、休業期間を実通院日数分として請求したものに対して、そのまま認定したもの(東京地裁平成16年4月27日判決)や、事故日から90日までは100%の損害があり、次の60日は損害が50%、次の44日間は25%としたもの(東京地裁平成22年4月12日判決)、事故の日から症状固定の日まで平均して35%の損害が生じたと認定したもの(平成25年3月27日判決)が挙げられます。

 家事従事者の休業損害の請求する際は、上記のような裁判例の中から事案に合ったものを探し、それを元に交渉していく必要があります。

弁護士 福留 謙悟