皆さんこんにちは。

 前々回のブログ(平成24年3月27日掲載分)のブログでは、個人事業主の休業損害について、簡単な例を挙げて具体的にどのように算定されるのかを検討し、前回のブログ(平成24年4月10日)では、固定費と変動費が異なった取り扱いとなる理由を検討していきました。今回は、休業損害を適正に受けるために、固定費、変動費の別をさらに詳しく検討して行きたいと思います。

 固定費の代表的なものとして、前回のブログでは、人件費や償却費が代表的なものと紹介しました。確かにこれらの費用は、売上に関係なく一定額発生する費用といえそうですよね。

 しかし、人件費は固定費であると完全に言い切れるのでしょうか。近年では、会社と従業員の雇用形態は以前のように一義的ではなく、様々な契約関係で従業員は会社で稼働しています。ですから、会社と従業員の雇用形態によっては、会社が従業員に支払う金員が、売上に関係なく一定額発生する費用と言い切れるのか難しい場合もあると思います。

 このような問題は、上記のような近年の雇用の流動化に限らなくとも、人件費が固定費といえるかは問題となりえます。たとえば、ある小さな工務店が親方となり工務店を経営し、工務店が数人の職人を雇用していたとしましょう。この工務店が職人に払う金員は人件費でしょうか。

 一見すると何の問題もなく人件費と思えますよね。しかし、工務店が雇っていた職人は、現場が忙しいときにだけ手伝いや応援に来てもらってたに過ぎない場合は、外注費用であり変動費のように見えますね。でも、ここ数年は忙しくほとんど毎日出社してもらっていた場合はやはり、固定費のようにも思えますよね。

 このように、人件費が固定費か変動費かをはっきり区別できない場合もありえそうです。このような問題は人件費に限らずその他の費用でも固定費か変動費かは問題になりえそうです。そうだとしたら、ある費用が変動費だと保険会社に言われたときにも、その時点で諦めるのではなく、その費用は固定費としての性格が十分にあると反論し適正な休業損害を補償してもらうようにしたいですね。

 それでは、また。

弁護士 福永聡