自賠責保険が本来的に加害者の責任保険であることを重視して、上記回収済みの自賠責保険金は加害者側にこれから請求していく予定の部分に充当されるということになれば、結論として、被害者が取得する損害賠償金の総額が少なくなってしまいます。これでは、人傷保険会社が自賠責保険金を回収した場合とそうでない場合とで、被害者が受けられる賠償額が変わってきてしまい、不当であると考えられます。

 一方、人傷保険会社が回収した自賠責保険金は、あくまで人傷保険金部分内に充当されると考えれば、人傷保険会社が自賠責保険金を言ってしまえば取りすぎている場面が生じ得ます。

 最近の裁判例を見ると、東京地裁平成21年12月22日判決が、人傷保険会社が自賠責保険から回収したか否かによって被害者が不利益を受ける尾は相当ではないことを理由に人傷保険会社が回収した自賠責保険金は損益相殺の対象としないと判断しています。