4.直接影響はしないけど

 河邊判事は、

「労働能力への直接的な影響は認められなくても、対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で間接的に労働能力に影響を及ぼす恐れが認められる場合には、後遺障害慰謝料の加算事由として考慮し、原則として100万~200万の幅でこれを増額する」

ともしています。
 そのため、そのような事情がある場合には、逸失利益としては請求できなくとも、慰謝料の増額事由となりえます。
 例えば、22歳の男性会社員について、下顎部の2か所にわたる脱色線状痕(当時の12級13号(男子の外貌に著しい醜状を残すもの))を残した事案について、直接労働能力に影響をしているとは言い難いが、対人関係に消極的となり労働意欲その他労働能力に間接的影響を及ぼしているとして、慰謝料を630万(同事案の一般的後遺障害慰謝料は420万)とした裁判例があります(東京地判平成17年12月21日自保ジャーナル1637号)。