皆様こんにちは。弁護士の菊田です。
本日は、時効についてのお話です。
時効という言葉を聞くと、例えば殺人事件の時効など、刑事事件の時効を思いつかれる方も多いと思いますが、民事事件においても、時効には注意しなければなりません。交通事故でいえば、被害者の方が、加害者に対する損害賠償請求権が時効にかからないように注意しなければなりません。
そして、加害者に対する損害賠償請求権は、「被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年間権利行使しないとき」に消滅します(民法724条、自賠法4条)。
ここでの「損害を知ったとき」とは、負傷や物損の発生を知ることを意味します。
ただし、事故当時予見できなかった後遺障害が後になって発生したようなケースであれば、症状固定の日や、後遺障害が顕在化した日を「損害を知ったとき」と解されることが多いです。
また、交通事故においては、示談交渉が難航して、「損害および加害者を知ったとき」から3年が近づいてしまうケースもあります。このような場合には、時効中断の手続をとる必要があります。時効が中断された場合には、中断されたときからあらためて時効期間(交通事故では3年)が経過しなければ、時効にはかからなくなります。
そして、この時効中断の手続としては、①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認の3種類が存在します(民法147条)。
このうち、①請求については、ただ内容証明郵便等で支払いを催告するだけでは時効は中断せず、催告後6か月以内に訴訟提起等の強力な手段をとることによってはじめて、催告時に時効が中断すると評価されることになります(民法153条)。
③承認については、加害者が被害者に対して損害賠償債務の存在を知っている旨を表示することをいい、明示的に「知っている」とまで言わずとも、支払猶予の申し出等、債務が存在することを前提とする意思表示がされれば足ります。また、この意思表示は書面等による必要はありませんが、実際に裁判になって加害者が債務を承認したことを立証する必要が出てきた場合に備えて、書面に残しておいた方が無難ではあります。
以上が、時効についてのおおまかな説明になります。
このように、時効は、ただ3年が経過したら消滅するという単純なものではなく、事故から3年が経過していても、損害賠償を請求できる可能性はあります。もし「時効が経過してしまったのでは?」と不安を感じられた方は、1度ご相談頂ければと思います。