以前、依頼者の方で事故から4ヶ月くらい経ってから耳鳴りがするため、これまで整形外科に通院していたが、耳鼻科にも通院したいので、保険会社に話をして欲しいと言った方がいらっしゃいました。
この話を聞いて、私は、正直「困ったなぁ。」と思いました。なぜ、困ったかというと、事故後にはなかった症状が、事故から時間が経って出てきた場合、保険会社は、かなりの確率で事故との因果関係がないため、新たに出てきた症状の治療費を支払うことはできないと回答することが多いからです。
確かに保険会社がこのような場合に治療費の支払いを拒絶するのもうなずける面はあります。なぜなら、法的には、事故との因果関係のないけがの治療費を出す必要がないし、なにより、後から「ここも痛い。あそこも痛い。」と言われて、その度に治療費を支払っていたら、多額の治療費を支払うはめになってしまうからです。
しかし、事故から時間が経ってから事故の影響による症状が全く出ないとは限りません。もちろん、時間が経ってから出てきた症状が事故と因果関係のあることを、医者に検査をしてもらい明らかにできればいいのですが、なかなかそうもいかないと思います。
そんなときは、健康保険を使ってひとまず自分で治療費を負担して治療をしたらいいのかなと思っています。なぜなら、最終的に、保険会社が自己負担した治療費を支払ってくれるかは交渉次第といところもありますし、治療を我慢して、もし、重い障害が残ったりしたら長い目で見たときには大変な損害を被るからです。
弁護士 竹若暢彦