皆さんこんにちは。

 頸椎捻挫(いわゆるむち打ち症)等の場合、被害者の方は、病院の治療に加えて、鍼灸、マッサージによる治療を受けたり、温泉治療を行ったりする場合があります。

 これらの費用についても、被害者側にしてみれば加害者側が負担すべきと考えられると思われます。

 しかし、鍼灸、あんま、マッサージ等医師以外が施術する場合の治療費は、施術の客観的な治療効果の判定が困難である、単に健康維持のために受けたのか、当該症状の治療のために必要かつ相当なものであったのか判別しにくい、施術費算定についても診療報酬算定基準のような明確な基準がない等の事情があります。

 そのため、これらの施術料が損害として認められるためには、原則として医師の指示が必要となるといえます。

 もっとも、医師の指示がない場合でも、鍼灸、マッサージ等の施術の必要性、合理性、有効性や費用、期間の相当性がある場合には、損害として認められる場合があります(札幌地判昭和56年7月10日、東京地判平成16年2月27日等)。

 温泉療法についても、原則として医師の指示があり、かつ治療上有効かつ必要性がある場合に認められる場合がありますが、さらに医師の明確な指示が必要と思われます(医師による温泉治療の適用がある旨の診断がされた事例として浦和地判平成4年1月28日、医師から風呂に入って温めるのがよいと言われたにすぎない事案で必要性を否定した東京地判平成10年1月20日)。

 ただし、金額については減額される場合が多く、温泉治療に要した費用全額が常に認められるわけではありません(医師の勧めがあった温泉療養費20万円のうち、60%を認めた事例として東京地判昭和53年3月16日)。

 温泉治療をする場合には、医師の明確な指示を得ておくべきでしょう。

弁護士 髙井健一